灯油をポリタンクに給油中、ホースが破損し、噴き出した灯油がストーブの火により引火して火災
業種 | その他の小売業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100699
発生状況
この災害は、タンクローリーからホースにより灯油をポリタンクに給油中、ホースが破損して灯油が噴き出し、近くで使用していたストーブにより引火して火災が発生したものである。災害発生当日、給油所から灯油の配送を請け負っている運送会社の2名の作業員が、タンクローリー(最大積載量:3.2t)を運転して灯油の配達の依頼を受けた肉店に到着した。
依頼主の肉店に到着した作業員は、タンクローリーを店の前に駐車し、タンクローリーに接続されている給油用の低圧耐油用ホース(長さ:40m、外径:37mm、内径:25mm、使用最大圧力:10kg/cm2 材質:合成ゴム)を店の中に引き入れて、店備え付けの更衣室の前に置かれた5個のポリ容器(内容量:18リットル)に給油を始めた。
3個目のポリ容器に給油していたとき、ホースの途中が破損して灯油が噴き出し、噴き出した灯油が近くで使用していた反射式ストーブの火に引火して店が全焼した。
この火災により逃げ遅れた1名が死亡し、8名が火傷など負傷した。
原因
この災害は、タンクローリーからホースにより灯油をポリタンクへ給油する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | ストーブを使用している近くに給油用ホースを這わせて、灯油の給油作業を行っていたため、ホースの破損により噴き出した灯油が容易に引火したこと また、屋内において給油の作業を行っていたことも見過ごしできない原因の一つと思われる。 |
2 | 使用していた給油用ホースが経年変化により劣化または損傷していたこと 給油用ホースを店内に引き込む際に、著しい曲げなどの外力が加えられたことにより亀裂が生じて破損したものと推定される。 |
3 | 給油に使用していたホースの点検が不十分であったため、損傷の程度が把握されず、損傷箇所が見過ごされていたこと |
4 | 灯油をポリタンクなどに注油する作業についての作業手順が定められていなかったため、作業員の経験による判断に委ねられて作業が行われていたこと |
5 | 作業員の1人は丙種危険物取扱者免状を取得していたが、灯油を給油する作業に関わる危険性についての認識が乏しかったこと |
対策
この災害は、タンクローリーからホースにより灯油をポリタンクへ給油する作業で火災が発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 火気使用場所の近くで給油の作業を行うこと、給油用ホースを這わせることなどを禁止すること なお、給油の作業は可能な限り屋外の火気などによる引火のおそれのない場所で行うことが望ましい。また、身体および機材への静電気の帯電を防止する措置を講じる必要がある。 |
2 | 給油作業の方法および順序を定めた作業手順を作成し、作業手順に従って作業が行われるように周知徹底すること |
3 | 給油用ホースなど給油に必要な機材の点検項目および廃棄、補修などの判定基準を定めた点検要領を作成し、点検者を指名し、その者に作業前および一定期間ごとに点検要領に基づく点検を実施させ、その結果を記録して保存すること |
4 | 給油作業に従事する作業員に対して、給油作業に伴う火災・爆発などの危険性およびその対策について安全教育を実施すること 灯油の配送を請け負わせている給油所は、運送会社が行う安全教育の実施に際して必要な情報の提供など技術的指導援助を行うこと |