農薬製造工場において集じん機の清掃作業中、農薬中毒に罹る
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他保護具を指定していない | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100696
発生状況
この災害は、農薬製造工場の定期修繕における集じん機の清掃作業中に発生したものである。災害が発生したのは、粉砕した軽石にプロポキスル(PHC)、フェノブカルブ(BPMC)などの農薬成分をスプレーノズルから噴射して付着させ、粉剤、粒剤、微粒剤などの農業用薬品を製造する工場である。
災害が発生した日、作業班長および2名の作業員とで集じん機の清掃作業を始めた。
集じん機の清掃作業は、集じん機ホッパー内に溜まった粉じんの除去、集じん機内のフィルターを取り外し、フィルターに付着した粉じんを除去するものであった。
集じん機に集塵される粉じんは、農薬製造ラインで発生する粉じんを排気ダクトにより吸引したもので、農薬の原料であるプロポキスル(PHC)、フェノブカルブ(BPMC)などの農薬成分が付着した粉じんである。
清掃作業は午前中から始められ、被災者らは、吸収缶にプレフィルター付きの防毒マスクを着用して、集じん機内の清掃と45枚のフィルターのうち30枚の清掃を終え、この日の作業を終了して帰宅したが、翌朝3名ともめまい、嘔吐等身体の不調を訴えたため、病院に収容したところ、コリンエステラーゼ値が異常に低いことが判明し、急性農薬中毒と診断された。
原因
この災害は、農薬製造工場の定期修繕における集じん機の清掃作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 集じん機により集塵された粉じんには、農薬の原料として使用していたプロポキスル(PHC)、フェノブカルブ(BPMC)など有害な物質が付着していたこと | |
2 | 被災者ら使用していた防毒マスクは、吸気弁が破損しており、また面体接顔部にメリヤスニットを付けて使用していたことなどから、被災後のフィットネステストの結果、漏えい率が異常に高かったこと | |
3 | 保護具は、各自のロッカーに保管されるなど保護具の清潔の保持、点検が十分に行われずに破損したままの保護具の使用が放置されていたこと | |
4 | 保護具の必要性、保管、点検、装着方法、面体のフィットネスなどについて十分な教育が行われていなかったこと | |
5 | 集じん機のフィルターに高圧空気を吹き付け、付着した粉じんを吹き飛ばす方法で除去していたため、余分の粉じんを舞い上がらせてしまったこと | |
6 | 集じん機の清掃作業に関して、作業方法および保護具の使用などについての作業手順を作成する具体的な対策を定める適切な労働衛生管理が行われていなかったこと |
対策
この災害は、農薬製造工場の定期修繕における集じん機の清掃作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | フィルターに付着した粉じんの除去作業は、水洗いにより行うこと、局所排気装置を備えたチャンバー内で行うことができるように設備を設けることが必要であると考えられること | |
2 | チャンバー内や水洗いによらない場合は、作業場所に移動可搬式の局所排気装置を設置するなど作業者の呼吸域に粉じんが拡散しない方法で作業を行うこと | |
3 | 使用する保護具は、着用者の顔面に合った形状および寸法の接顔部を有するものを選ぶこと なお、面体と接顔部の間には、接顔メリヤスの使用を避けること |
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4 | 防毒マスクを管理する責任者を指名し、防毒マスクの適正な着用、取扱方法について必要な指導を行わせるとともに、防毒マスクの適正な保守管理を行わせること | |
5 | 粉じんが発散する作業については、発散する粉じんを抑制する手段、作業の方法およびその手順、必要な保護具を指定するなどの作業手順書を作成し、周知徹底すること |