トラッククレーンで道路を走行中に多重事故
業種 | 一般貨物自動車運送業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 交通事故(道路) | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100685
発生状況
この災害は、車両積載型トラッククレーンで走行中に多重交通事故が発生したものである。災害発生当日、トラック運転者のAとBは、斎場改修工事現場に仮設足場材を運搬するため車両積載型トラッククレーン(吊り上げ荷重2.93t)2台に建設会社で資材を積み込み、別々に運転して午前9時頃に工事現場に到着した。
その工事現場で資材の荷降ろしを行った後、再びトラックを運転して会社に向かったが、トラック運転者Aは走行時に視界の妨げにならないようクレーンのフックブロックを巻き上げ、ジブを進行方向の中心より左側に向けた状態で運転していた。
工事現場を出発して1時間ほど経ったとき、先頭を走っていた運転者Aのジブ先端の右側が道路脇にあった電柱に接触し、その反動でジブは反時計回りに約180度旋回した。
また、反動でトラックが左側に振られたので、運転者Aが車体の立て直しを行なおうとハンドルを右に切ったところ、センターラインを超えてしまった。
そのとき、対向車線を肥料の運搬を終えて帰路についていた7.5tトラック(運転者C)が来たためこれと激突し、その衝撃でクレーンの巻き上げワイヤーが切断して、フックブロックが運転席に激突し運転席を破壊した。
さらに、運転者Aのトラックは、対向車線を前方に走行し、家内労働者宅に委託部品を届けるために運転者Dが運転していた軽自動車に正面衝突してやっと停車した。
また、運転者Aのトラックに運転席を破壊された運転者Cのトラックは、センターラインを越えて対向車線に飛び出し、運転者Aのトラックに続いて走行していた運転者Bのトラックと正面衝突し停止した。
この多重交通事故で、運転者Cが頭部挫傷等で死亡し、運転者Bは打撲傷で2週間の休業、運転者Dは両足骨折、内臓破裂で10ヶ月の休業となったが、運転者Aは不休であった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | トラッククレーンのジブを固定せずに道路を走行したこと 運転者Aは、車両積載型トラックの移動に際し、ジブを進行方向に向けフック掛けにフックブロックを固定しないまま道路を走行したために、ジブが走行中に動いて道路わきの電柱に触れたので車体の傾きを修正しようとして、結果的に対向車線にはみ出した。 なお、後続走行していた運転者Bは、ジブを荷台方向に向けていた。 |
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2 | ジブの油圧装置が旋回を止める機構となっていないこと このクレーンのジブの旋回用油圧装置は、旋回レバーを中立にしていても前記の固定措置を行わずに走行していると、走行中の振動、風荷重、慣性等の外力により、徐々にジブが回転する構造のものであった。 |
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3 | 安全走行をしていなかったこと 事故が発生したのは見通しの良い片側1車線の県道であったが、車両の通行がかなり多いので、特に車両積載型トラッククレーンの運転の場合は安全運転を行うべきであった。 なお、運転者Aは、当日だけ荷の運搬を請け負って走行していた。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | クレーンのフックブロックを固定すること 車両積載型トラッククレーンを移動するため道路等を走行する場合には、トラッククレーンの製造者の指定する方法によりフックブロックを確実に固定する。 なお、トラックを空荷で走行する場合には、クレーンのジブは視界の妨げにならないよう荷台方向に固定する。 |
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2 | 走行前に車両の点検を実施すること 車両積載型トラッククレーンを使用して運搬、荷役の作業を行う場合には、作業の開始前に次の事項について点検を行い、不具合部分は直ちに補修する。 |
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(1)
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貨物自動車機能 (安衛則第151条の75関連) | ||
a
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制動装置および操縦装置の機能 | ||
b
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荷役装置および油圧装置の機能 | ||
c
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車輪の異常の有無 | ||
d
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前照燈、尾燈、方向指示器および警報器の機能 | ||
(2)
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クレーン機能 (クレーン規則第78条関連) 巻過防止装置、過負荷警報装置その他の警報装置、ブレーキ、クラッチ、コントローラーの機能 |
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3 | 安全管理を行うこと 車両積載型トラッククレーンを使用して運搬、荷役の作業を行う者に対して、交通安全、クレーン等作業における安全、危険有害物の取り扱い時の安全衛生等について定期および随時に教育を実施する。 |