滅菌タンク内に次亜塩素酸ソーダを補充する作業中、酢酸を注入したため塩素ガスが発生
業種 | 旅館業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100681
発生状況
この災害は、ホテルのポンプ室内で水道水を殺菌する滅菌タンク内に次亜塩素酸ソーダを補充する作業中に発生したものである。水道水を殺菌する設備は、ポンプ室に設置されており、滅菌タンクには2〜3月ごとに、20リットル入りのポリ容器に入っている次亜塩素酸ソーダを補充していた。
ポリ容器に入った次亜塩素酸ソーダは、ポンプ室内に設けられた棚に常時15缶ほどストックされていた。また、この棚には、従前シーツなどを浸け洗いするときに使用していた酢酸の残りがポリ容器に入れられて、封の開けられた次亜塩素酸ソーダの入ったポリ容器に並べて置かれていた。
災害が発生した日、施設の管理を担当する被災者は、滅菌タンク内の次亜塩素酸ソーダの残量をチェックしたところ、少なくなっていることから補充することとした。そこで、被災者は、保管棚に置かれていた封の開いた次亜塩素酸のポリ容器と誤って酢酸が入ったポリ容器を手に持ち、脚立を足場にして滅菌タンク内に注入したところ、塩素ガスが発生してポンプ室内に拡散した。この塩素ガスを吸入して、被災者およびポンプ室入り口で作業していた同僚が塩素ガス中毒に罹ったものである。
原因
この災害は、水道水を殺菌する滅菌タンク内に次亜塩素酸ソーダを補充する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 水道水滅菌タンクに次亜塩素酸ソーダを入れるべきところ、次亜塩素酸ソーダが入ったポリ容器と酢酸の入ったポリ容器とが並べて置かれ、容器がほぼ似たような形状をしていたため、間違えて酢酸を滅菌タンク内に入れたこと |
2 | 酢酸を次亜塩素酸ソーダが入った滅菌タンク内に注入したことにより、激しく反応して、塩素ガスが生成してポンプ室内に拡散したこと |
3 | 次亜塩素酸ソーダを取り扱う作業を行うに際して、呼吸用保護具など適切な保護具を使用していなかったこと |
4 | 次亜塩素酸ソーダの物性および有害性に関する十分な知識がなかったこと |
5 | ポンプ室内の換気が行われていなかったこと |
6 | 取り扱う化学物質の危険・有害性を把握するなどの労働衛生管理体制が十分機能していなかったため、その取扱いが十分な知識を有していない現場作業員の判断に委ねられて行われていたこと |
対策
この災害は、水道水を殺菌する滅菌タンク内に次亜塩素酸ソーダを補充する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 次亜塩素酸ソーダは、似たような容器であっても他の物質と容易に判別ができるように表示をし、他の物質と区画した換気の良い冷暗所(20℃以下)に保管し、重金属類が混入しないようにすること |
2 | 取り扱う化学物質については、MSDS(製品安全データシート)などにより危険・有害性を把握し、作業方法および作業の順序、適切な保護具の備え付け、異常時の措置などを記載した作業手順書を作成すること |
3 | 次亜塩素酸ソーダを注入する作業は、吸入、接触を避けるため適切な保護具を着用し、作業終了後は顔、手、口などを水洗いすること なお、保護具は、緊急時に備え必要数を備え付け、常時有効かつ清潔に保管庫に保管すること |
4 | 次亜塩素酸ソーダの注入の際に、次亜塩素酸ソーダの蒸気の拡散を防止するための局所排気装置を滅菌タンクに設けることが必要であること |
5 | 次亜塩素酸ソーダの滅菌タンク内への注入は、固定のステージを設けて作業が行えるようにすること |