シンナーを用いて部品を脱脂洗浄する作業中、有機溶剤中毒に罹る
業種 | 機械(精密機械を除く)器具製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100678
発生状況
この災害は、洗浄用シンナーを用いて部品を脱脂洗浄する作業中に発生したものである。部品を脱脂洗浄する作業は、縦横25mの床面、天井高さが5mの工場の一角に置かれた高さ90cmの作業台で行われていた。工場の壁面上部には換気扇が取り付けられて全体換気が行われていたが、作業台には局所排気装置などの換気装置は設けられていなかった。
脱脂洗浄の作業は、作業台に置かれた部品を手に持って、油差し用の容器に入れられた洗浄用シンナーを部品にかけ、エアーガンを用いて部品にエアーを吹き付けて付着している溶けた油分を吹き飛ばしたり、洗浄用シンナーをしみ込ませたウエスを用いて拭き取ったりするものである。
使用していた洗浄用シンナーは、トルエンが80%と飽和炭化水素が20%のものである。
災害が発生した日の午前10時過ぎから、被災者は、洗浄用シンナーを用いて部品の脱脂洗浄の作業を始め、午前中で作業を終え、昼の休憩に入ったが歩行困難な状態となり、意識が混沌となった状態となったため病院に収容し診察受けたところ、有機溶剤中毒と診断された。なお、被災者は、作業中、自ら購入した簡易防じんマスクを着用していた。
原因
この災害は、洗浄用シンナーを用いて部品を脱脂洗浄する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | トルエンを含む有機溶剤を洗浄剤として用いて、呼吸域近くで部品の脱脂洗浄の作業を行っていたこと。 |
2 | トルエンを取り扱う作業場所に、局所排気装置などトルエンの蒸気の拡散を防止するための対策が講じられていなかったこと。 |
3 | 有機溶剤作業主任者が選任されず、有機溶剤により汚染され、又はこれを吸入しないような作業方法の決定、作業の指揮などが行われていないなど安全衛生管理体制が機能していなかったため、防じんマスクの使用、局所排気装置の未設置などが、見過ごされていたこと。 |
4 | 作業環境測定が実施されていなかったため、作業環境の実態が把握されず、有機溶剤に係る作業の安全衛生が確保されていなかったこと。 |
5 | 簡易防じんマスクを着用するなど有機溶剤の有害性に関する知識が不十分であったこと。 |
対策
この災害は、トルエンを主成分とする洗浄剤を用いて部品を脱脂洗浄する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 脱脂洗浄の作業は、局所排気装置の設けられたブース内で行うように作業場所を改善すること。 |
2 | トルエンなど第1種および第2種の有機溶剤を取り扱う作業場所は、6月以内ごとに作業環境測定を実施すること。 |
3 | 有機溶剤により汚染され、または吸入しないような作業方法および順序などについての作業手順書を作成し、周知徹底すること。 |
4 | 有機溶剤を取り扱う作業場所には、有機溶剤の人体に及ぼす作用、有機溶剤等の取扱い上の注意事項、有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置などを掲示すること。 |
5 | 有機溶剤を取り扱う業務に従事する作業員が自らの取り扱っている有機溶剤等の区分を知りうるように表示すること。 |
6 | 有機溶剤作業主任者の資格を有する者を選任して、その者に、作業手順に従った作業の指揮、局所排気装置の点検などの職務を行わせること。 |
7 | 有機溶剤を取り扱う作業員に対して、取り扱う有機溶剤の危険・有害性およびその防護対策などについて教育を実施すること。 |