硫酸を含んだ排液ピット内に漏出した亜硝酸ソーダ溶液が流れ込み、硝酸ガスが発生
業種 | 塗料製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100665
発生状況
この災害は、出荷用のポリタンクに濃度40%の亜硝酸ソーダ溶液を充填する作業中に発生したものである。ポリタンクへの充填は、亜硝酸ソーダ溶液の貯蔵タンク側の元バルブを開き、充填用ポンプを起動し、ダイヤフラム弁作動用スイッチを入れた後、充填量を設定し、充填ガンをポリタンクの充填口に差し込み、充填側のバルブを開き、充填ガンに取り付けられたダイヤフラム弁開閉スイッチを入れることにより設定した充填量を自動的に行うものである。また、大容量のコンテナへの充填は、ダイヤフラム弁のエアーロックピンを開放し、流量計を見ながら、充填側のバルブを開閉することにより行われていた。
充填ガンは、排液ピットに配管されたドレン口に格納されていた。排液ピットには、反応槽からの硫酸を含んだ洗浄液が溜められていた。
災害が発生した日、被災者は、ポリタンクに亜硝酸ソーダ溶液を手順に従って充填した後、充填ガンをドレン口に差し込み、コンテナへの充填の準備作業を行っていたところ、排水ピットから硝酸ガスが発生したので、排液ピットへ注水を30分間行った。そして帰宅後の深夜、身体の異常を訴え病院に収容され、肺水腫と診断された。
原因
この災害は、濃度40%の亜硝酸ソーダ溶液を充填する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 亜硝酸ソーダ溶液が、硫酸を含む排液ピットに流れ込み、硝酸ガスが発生したものと考えられること | ||
2 | 亜硝酸ソーダ溶液が排液ピットに流れ込んだ原因となった亜硝酸ソーダ溶液充填機の操作を誤りとしては、次のいずれかが考えられること | ||
(1) | ポリタンクへの充填後、充填側のバルブを開いたまま、コンテナへの充填の準備作業の際に、ダイヤフラム弁のエアーロックピンを開放したため、ダイヤフラム弁が開き、亜硝酸ソーダ溶液が充填ガンから漏出したこと。 | ||
(2) | ポリタンクへの充填後、充填側のバルブを閉じたが、コンテナへの充填の準備作業の際に、ダイヤフラム弁のエアーロックピンを開放し、ダイヤフラム弁が開いた状態で充填側のバルブを開いたため、亜硝酸ソーダ溶液が充填ガンから漏出したこと。 | ||
3 | 充填作業終了後に、亜硝酸ソーダ溶液の充填ガンを格納する場所が、硫酸を含む排液ピットに通じるように配管されていたこと | ||
4 | 硝酸ガスが発生した後、適切な保護具を着用することなく注水作業を行っていたこと |
対策
この災害は、亜硝酸ソーダ溶液を充填する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 充填ガンを格納する配管は、酸性の排液と混合しないように、独立したピットを設けて配管すること |
2 | 硫酸など有害物が滞留する排液ピットなどは、蓋を設けるなど密閉構造とするなど、ガス、蒸気等の漏出を防止すること。なお、排液ピット内で反応その他により発生した有害ガスなどは、処理施設へ安全に送給する配管を設けることが必要であること |
3 | バルブ操作の順序を誤ることによる漏出を防止するためのインターロック機構を検討すること |
4 | 充填の際のバルブの操作など作業方法および順序、呼吸用保護具、保護衣、保護手袋、保護長靴などの保護具の着用、異常時の対応方法などについての作業手順を作成し、周知徹底すること |
5 | 作業指揮者を指名し、その者に、作業手順に基づく作業指揮、保護具の使用状況の監視、異常時の対応、保護具の点検などを適切に行わせること |
6 | 排液との反応など取り扱う物質の危険・有害性およびその防止方法などについて教育を実施すること |