焼却処理施設において、汚泥ピットが攪拌中に爆発
業種 | 産業廃棄物処理業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 爆発性の物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100558
発生状況
この災害は、環境センターの汚泥等の焼却処理施設において発生したものである。この施設での作業は、
(1) 回収された汚泥等をピット(4m×4.8m×2m)に投入する
(2) ピット内に生石灰を投入する
(3) ドラグショベルのバケットで攪拌する
(4) ピット内で乾燥した汚泥をドラグショベルですくい出し、焼却する
の手順で行われることになっており、災害は(3)のバケットで撹拌する作業段階で発生した。
災害発生当日、午前9時から10時頃までに、汚泥等(埋立処分場の浸出水の蒸留残土約6立方メートル、汚泥約4立方メートル、高分子吸収剤約1立方メートル)のピットへの投入、続いて送気装置付きマスクを使用しての生石灰の投入を行い、その後ドラグショベルで撹拌を始めたが、午前10時30分頃になってドラグショベルのエンジンが咳込みだしてピットから粉じんや蒸気のようなものが立ちこめ、周囲が一瞬見えなくなった。
そこで、ドラグショベルの近くにいた被災者と同僚は、室内の換気を行うため南北にあるシャッターの開閉スイッチを入れ、シャッターが各々1〜2m上ったときに、ピット付近で「ドカーン」という音とともに爆発が起こり、1人は全身熱傷で死亡し、他の1人は一部火傷で3週間の休業となった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 汚泥等に含有されている物質などを確認していなかったこと 環境センターでは、取引先から廃棄物を受け入れるにあたって、あらかじめサンプルの提出を求め、会社内で内容の分析を行っていたが、燃焼または中和に必要な熱量と塩素含有量だけであり、中にどのような物質が含有されているかの分析あるいは情報の提供を受けていなかった。 事故後に分析した結果では、紙おむつの吸収体の製造段階で溶媒として使用したシクロヘキサン(沸点80.7℃)が含有されていた。 |
2 | 生石灰の投入、撹拌により高熱が発生したこと ピットに投入した汚泥等を乾燥させるために、生石灰を投入しドラグショベルで撹拌しているが、これにより通常80〜100℃まで温度が上昇するため、シクロヘキサンの蒸気が発生し、室内に充満したものと考えられる。 |
3 | ドラグショベルのエンジンが点火源となったこと 汚泥等の乾燥を促進するため、ドラグショベルで撹拌しているが、そのドラグショベルのエンジンが点火源になったものと考えられる。 |
4 | 安全衛生管理が行われていなかったこと このセンターでは、生石灰を使用する処理が当初から行われていたが、作業手順が決められていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 処理対象事業場および処理過程で発生する物質などの調査分析を行うこと 搬入される汚泥等に含まれている物質や撹拌・加熱等により副生する物質などについて、あらかじめ情報として提供を受けること、又は自らの調査分析を行うことによって引火爆発の危険性や人体に対する有害性を確認しておくことが必要である。 |
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2 | 汚泥等の処理中に引火性のガス等が発生するおそれがあるときには、建物内に滞留して爆発の雰囲気を形成しないよう作業場所の換気を行うこと。 なお、建物内にガス検知装置を設置すること、換気により危険有害なガス・蒸気が外部に影響を与えないように処理することも必要である。 |
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3 | 点火源となる内燃機関等は使用しないこと 引火性のガス・蒸気の発生、滞留のおそれのある場所では、防爆型の電気機械器具を使用することが必要である。 |
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4 | 安全衛生管理体制を整備し、安全衛生教育等を実施すること | |
(1)
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危険有害なガス・蒸気が発生するおそれのある作業については、作業手順書を作成し、それに基づく安全衛生教育、訓練を徹底する。 | |
(2)
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安全衛生委員会を月1回以上開催し、安全衛生に関する事項について協議するとともに、安全衛生管理活動を徹底する。 |