自動車整備工場で塗料廃液の処理中に引火して工場が全焼
業種 | 自動車整備業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100557
発生状況
この災害は、自動車整備工場において使用済み塗料廃液の分離中にシンナーに引火して工場が全焼したものである。災害発生当日の朝、被災者は、まず塗装ブースにおいて乗用車2台の塗装をして、乾燥のため塗装場内の所定位置に移動させた後、バンパー塗装に使用した塗料廃液13リットルを投入していた塗料廃液分溜装置(タンクの中に廃液を入れ、80〜190℃のオイルで加熱してシンナー等を蒸発分離させ、パイプを通じて回収する装置容量15リットル)のスイッチを入れた。
その後、持ち込まれていた別の自動車の塗装作業に取りかかり、途中で午前中の15分の休憩をとった。10時15分頃、塗装場に戻ると、分溜装置のタンク蓋のところから蒸気が噴出しはじめており、続いて3個所から急激に液体が放射線状に飛散した。
そのとき同時に、分溜装置から約3m離れたところに設置されて稼動中の熱風乾燥機の付近で炎が発生し、炎は熱風乾燥機から分溜装置に向かって逆流した。
炎は、さらに工場内にあった灯油、塗料棚や塗料庫の塗料等に引火して工場が全焼した。この火災により、消火作業に当たった被災者のほか、消火の応援に駆けつけた作業者2名が煙に包まれて気道障害を負った。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | タンク内で分溜されたシンナーがパイプから排出されずに蓋のところから工場内に噴出したこと この分溜装置は外国製のものであるが、塗装廃液用として製作されたもので、正常な稼動の場合には密閉されたタンク内で分溜されたシンナー成分等がタンク内上部に配置された回収パイプを通じて外部に排出されるが、この災害の場合にはパイプからシンナー成分等が排出されずにタンク内に滞留したため、蓋のパッキンの隙間から外部に漏れ、工場内に拡散したものと推定される。 |
2 | 通常の処理量より多い廃液をタンク内に投入したこと 投入した塗料廃液(イソシアネート硬化剤混入のウレタン塗料)は、メーカーが指定した量よりも約2倍であったため、蒸発量が多く、また、廃液中の化学反応を起こしてできた固形物が膨張して排出パイプと安全弁を塞いでしまったものと推定される。 |
3 | 熱風乾燥機が防爆型のものでなかったこと 着火源となったのは分溜装置の近くにあった熱風乾燥機と推定されるが、防爆構造ではなかった。 |
4 | 消火作業等についての教育訓練が行われていなかったこと 工場内で引火性ガス漏れのおそれがあったのに、異常時における装置、消火作業要領等についての教育訓練が行われていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 塗料廃液の処理作業に関するマニュアルを策定すること 分溜装置による塗料廃液の処理については、メーカーの取扱い説明書を熟読するとともに、作業場の環境などを考慮した作業マニュアルを定め、関係作業者に周知徹底することが必要である。 特に、タンク内に投入する廃液の量については、塗料を使用した後の経過時間によって調節することがメーカーからも指示されているので、これらを含めて適正な量を投入するよう徹底することが重要である。 |
2 | 防爆型の電気機械器具を使用すること 引火性のガス・蒸気の発生、滞留するおそれのある場所で使用する電気機械器具は、防爆型の構造のものを使用すること。 |
3 | 安全衛生教育を十分に行うこと 爆発危険のある物質を取扱う作業、爆発性混合気体が形成される室内等で作業を行う場合には、関係作業者に対してあらかじめ爆発火災の危険性、異常時の措置要領、避難要領、消火方法について十分に教育訓練を実施しておくことが必要である。 |