タンカー船の機関室内でボルトをガス切断する作業中、廃液溜まりに火花が落ちて火災が発生
業種 | 造船業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100556
発生状況
この災害は、ドックへ入渠中のタンカー船(699t)の機関室内でガスを使用してボルトを切断する作業中、下方にある廃液溜まりに火の粉が落ちて引火し、火災が発生したものである。災害が発生したタンカー船は、定期検査を受ける準備のための整備の仕事を造船所が請け負い、構内下請け業者であるA社に発注し、A社は、さらにB社およびC社に仕事の一部を発注していたものである。
災害が発生した日、10時過ぎになって、A社の責任者は、船底のポンプ室内に設けられている船底タンク内に溜められた廃油を、マンホールを開けて、エンジン室の下方にあるビルジ溜まりに排出して機関室を出た。
午後3時頃に、B社の作業員は、主エンジンの脇にある開口部内の船底弁を取り付けているボルトをインパクトレンチで取り外しする作業を始めたが、ボルトの腐食が激しく取り外しできないため、ガス切断することとした。ガス切断する作業を始めてから10分ほど経過して、最初のボルトの切断が半分ほど進んだ頃、主エンジンの下方にあるビルジ溜まり付近から出火し、炎が機関室から昇降階段を経て上甲板に抜けていった。
原因
この災害は、機関室内でボルトをガス切断作業中、下方にある廃液溜まりに火の粉が落ちて、火災が発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 船底タンク内には、運搬したガソリンなどの積み卸しの際に生じる、油送管に取り付けられたストレーナー内の残油が溜められていたこと |
2 | 船底タンク内からビルジ溜まりに排出されていた廃液に混入していたガソリンが気化しやすい状態にあり、ビルジ溜まり内の空間部に滞留して着火しやすい状況にあったものと推定されること |
3 | 相当量のガソリンが混入している廃液が溜まっているビルジ溜まりの上方でアセチレンガスと酸素ガスを用いて金属を溶断する作業を行っていたため、溶断により発生した火の粉がビルジ溜まりへ落下し着火源となったこと |
4 | 溜められた廃液は、船外へ直接回収するための配管が船底タンクに設けられていなかったため、ビルジ溜まりに放出して回収する方法で行われていたこと |
5 | ガソリンなど引火性のものの混入量などについての情報が船主から造船所を通じて請負業者であるA、B、C社の関係者へ通報されていなかったため、安易に火気使用の作業がビルジ溜まりの周辺で行われたこと |
対策
この災害は、機関室内でボルトをガス切断作業中、下方にある廃油溜まりに火の粉が落ちて、火災が発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 整備の依頼を受ける際に、船主から船内の危険物の存在状況について情報を入手し、請負業者にその情報を提供することが必要であること |
2 | 請負業者は、造船所側からの情報に基づいて、火気使用などの作業については、あらかじめ作業場所周囲の危険物の確認方法、作業方法、作業の順序、周囲に存在する危険物の排除など作業手順を作成すること |
3 | 危険物等がある場所における火気等の使用を禁止すること |
4 | 危険物、危険物以外の引火性の油類等爆発または火災の原因となるおそれのある物が存在する周辺での作業を行うときには、消火設備を備え付けること |
5 | 元請業者は、統括安全衛生責任者に作業間の連絡調整、火気管理、異常時の警報の統一、異常時の退避経路の設定など統括管理を行わせること |
6 | ガソリンなどの引火性の高いものの残油の保管設備は、一般の廃液とは区分して 貯蔵する設備を設け、船内で放出することなく直接船外へ回収できる配管を設けることが望ましいこと |