溶融鋼を取鍋から鋳型に入れ鋳込中、取鍋内の溶湯を非常用の鍋に移した時、水蒸気爆発を起こした
業種 | ||||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他の作業環境の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100555
発生状況
この災害は、製鋼工場において連続鋳造設備による鋳込作業中、故障が発生し、取鍋内の溶鋼を非常用鍋に移したときに水蒸気爆発が発生したものである。鋳込作業は、取鍋に入った約75tの溶鋼を鋳型に流し、半製品であるビレット(15cm×15cm×135m)を連続的に製造する。
災害発生当日、冷却されてローラ上に出てきたビレットのうち1本の表面から、真っ赤になった高温の溶融した鋼が流れ出したため、作業を中止し、このビレットを除く等の処理作業を行っていたが、作業に手間取ったため、取鍋に残っていた約10tの溶鋼の温度が下がってきた。溶鋼温度が取鍋の中で下がると、溶鋼が固化して取り出せなくなるので、一旦、「捨湯」として非常用鍋に移すこととなった。
非常用鍋(40t用)は、事故の2日前にも同様な故障により「捨湯」された溶鋼を約20t入れて、鍋の上部から放水し冷却し、そのまま放置されていたものを使用することとし、天井クレーンで溶鋼の入った取鍋を吊り、非常用鍋に溶鋼を注入したところ、突然、水蒸気爆発が起こり、近くにいた8名の作業者が火傷などを負った。
原因
この災害は、製鋼工場の連続鋳造設備の鋳込み工程において、取鍋に入っていた高温の溶鋼を非常用鍋に移したとき、水蒸気爆発を起こしたものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 溶鋼を注入した非常用鍋(40t用)に水分が残留していたこと 水蒸気爆発を起こした2日前にも同様な鋳込み工程のトラブルがあり、非常用鍋(40t用)に約20tの「捨湯」としての溶鋼を入れ、数時間にわたって冷却水を上からかけ冷却していた。災害発生当日には、この非常用鍋の上部には、少し水が溜まったままになっていたにもかかわらず、その上に1500℃に近い高温の溶鋼約10tを入れたため、水蒸気爆発を起こした。 |
2 | 2日前に「捨湯」にあった非常用鍋にその上部に冷却水が残っているかどうかを確認しなかったこと |
3 | 非常用鍋に「捨湯」するときの作業手順が明確でなかったこと |
4 | 水蒸気爆発の危険性に関する安全教育が不十分であったこと |
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 水蒸気爆発について関係作業者に教育・訓練を通して周知徹底すること 高温の溶融金属が、床上、容器内などの少量の水と接触すると、水は爆発的に蒸発・膨張し、水蒸気爆発を引き起こす性質がある。 |
2 | 高温の溶融金属を取扱う場合は、作業場内に雨水、作業用水などによる水分の滞留が無いことを確認すること |
3 | 高温の溶融金属を取り扱う場合は、緊急時や異常時において使用する設備に滞留する水の有無、作業水などの噴出することによる危険性について、作業前に把握して対応を検討しておくこと |
4 | 作業の責任者は、前日からの作業の状況、特に、非常用鍋のような取鍋の使用状況、放水時間などについて、交代する作業者に確実に引き継ぐこと |