花火打上作業中、横に倒しておいた発射筒内の不発花火が爆発し、発射筒が暴走して花火師に激突
業種 | その他の製造業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 爆発性の物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 危険物が入っているものの |
No.100554
発生状況
この災害は、花火を打上げ台船上で連続打上げ作業中、横に倒しておいた発射筒内の不発花火玉が爆発し、発射筒が台船上を高速で走り、花火師に激突したものである。早打ち花火の打上げ作業は、台船上の「はかま」(発射筒を固定する台)に立てた発射筒の底部に炭火で加熱した焼き金を入れ、上部開口部から花火玉を落とし込むと、花火玉下部に取り付けられた打上げ用黒色火薬に点火し、花火玉が打上げられ、上空で割り薬が炸裂し花火が開くもので、引き続き同じ発射筒に花火玉を落とし込むことにより連続して打ち上がるもので、この大会では、X、Y、Zの3社が交替で行っていた。
災害発生当日の午後8 時頃、X 社の花火師A が5 寸玉20発10寸玉3 発の早打ちをする番になり台船上からの打上げを開始した。5 寸玉15発目位のとき花火の不発射状態が発生した。A は発射筒を上下に揺すったが駄目なので、筒上部開口から海水約9 リットルを注入したのち、発射筒を「はかま」から引き抜き2 m程離れた位置に横倒しに置き、打上げを続けた。10分程したとき、不発花火が発射筒内で爆発し、発射筒が高速で走り、台船上で待機していたY 社の花火師Bに激突した。
原因
この災害は、花火を打上げ台船上で連続打上げ作業中、横に倒しておいた発射筒内の不発花火玉が爆発し、発射筒が花火師に激突したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 発射筒内で不発となった花火玉を筒ごと「はかま」から引き抜き、台船上に横に倒しておいたこと 花火玉は、上部には把手、下部には円盤状打上げ火薬が付いており、挿入した場合に斜めになって発射筒内壁の途中に引っ掛かり、焼き金に接しなくて不発となることがある。この場合、焼き金を十分に冷却しないと爆発する恐れがあり、発射筒が「はかま」に固定されていなければ、発射筒ごと暴走することになる。 |
2 | 不発となった花火玉の発射筒に海水を注入してからすぐに横倒しにしたこと 発射用筒内へ海水を大量に注入したが、すぐに横に倒したので、注入した海水が外に流れ出し、焼き金の冷却や花火玉の火薬の湿潤が十分できなかった。 このため、焼き金周囲の温度が下がらないので、約10分後に、黒色火薬が発火下限温度に達し、爆発したものと推定される。 |
3 | 不発の場合の処理を打上げを続行するため、作業手順どおり実施しなかったこと |
対策
この災害は、花火を打上げ台船上で連続打上げ作業中、横に倒しておいた発射筒内の不発花火玉が爆発し、発射筒が花火師に激突したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 不発射状態発生の場合における作業手順を作成し、安全管理を徹底すること 花火打上げ作業を指揮する者を打ち上げ場所ごとに指名し、その者に作業手順どおり実施するよう関係各社を指揮指導させて、管理体制の確立を図る。 |
2 | 不発射状態発生の場合における作業手順を関係作業者に周知徹底すること 打ち上げ火薬に点火しない場合の処理法等の煙火消費保安基準について関係者に対する安全教育を実施する。シーズン前に再教育を行って基準の確認を行うことを励行する必要がある。 |
3 | 発射筒および固定用台などの打上げ設備、作業方法について、安全衛生上の改善を検討すること 早打上げのときに不発状態が発生しても対応できるように、発射筒および固定用台について十分な数を用意すること、作業方法についても10分以上経過しない不発状態の発射用筒を固定台から引き抜かないことなどを検討する。 |