浮石の破砕作業中、飛来した岩石が頭部を直撃
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 地山、岩石 | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | その他の飛来・落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100552
発生状況
この災害は、道路災害防除工事において破砕した岩石が立入り禁止区域外まで飛来したものである。災害発生当日、この工事現場では、道路上に落下する危険のある岩石の亀裂箇所を破砕するため、元請の現場責任者が下請の作業員を指揮して、国道を通行止めにしたうえ硫酸アルミニウムを主成分とする破砕薬(アルミニウム等と異種金属との酸化還元反応による熱を利用して高圧水蒸気を瞬時に発生させる方式のもの)を使用して岩石を除去する作業を行っていた。被災者は発注者としてこの工事の施工監督をするため部下2名とともに朝から現場に立会っていた。
作業は朝から行われていたが、午後2時45分頃、破砕作業の責任者(破砕箇所の監視人も兼ねていた下請の作業員)から点火5分前のサイレンによる退避合図があったので、被災者は元請の現場作業員らとともに所定の避難位置に移動して破砕薬の点火を待った。
午後2時50分頃、点火1分前のサイレンによる合図があって破砕作業者(下請の職長)が点火して亀裂箇所の岩石の破砕が行われたが、このとき立入り禁止区域外に退避していた被災者のところに岩石(重さ約2.6kg)が飛来し頭部に激突した。
このため、被災者は、道路上にうつ伏せになって倒れ、脳挫傷のため死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 退避の位置が不十分であったこと 被災者等が退避した箇所は、破砕の箇所からは70m程離れていたが、破砕により飛来した岩石はさらにそこから20m程離れたところにも飛んでおり、退避距離の設定が不十分であった。 |
2 | 穿孔(せんこう)の方向が不適切であったこと 破砕のための穿孔(せんこう)の方向は、試験破砕および当日午前中までは海側となっていたが、この災害の時の穿孔の方向は退避場所側(陸側)となっていた。 |
3 | 装薬の量が不適切であったこと 破砕薬メーカーの「技術施工マニュアル」では、「装薬の量は1孔に1本を原則とする」となっていたが、この現場では1孔に2〜4本使用していたため、破砕エネルギーが大きくなり、岩石の飛来数、飛来距離が大きくなっていた。 |
4 | 工事現場の安全衛生管理が不十分であったこと 元請および発注機関の現場責任者は、破砕計画および作業手順について、工事および作業開始前に十分に検討を行っていなかった。 また、発注機関の現場責任者と関係請負人(下請を含む)との間の作業の安全に関する連絡調整が不十分であった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 退避場所について作業開始前に十分に検討すること 退避場所、距離については、工事計画および作業開始前に、岩石の種類、浮石の状況、装薬の量等を観察して検討し、安全が確保される範囲を立入禁止区域として設定する。 |
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2 | 装薬の方法、方向についてはあらかじめ計画を定めて行うこと 装薬の量、穿孔(せんこう)の方向についてはあらかじめ作業計画のうえで明確に定め、それに従って実施することが必要である。 なお、破砕方向を変更するときには、退避場所について再検討することを忘れてはならない。 また、装薬については、破砕薬メーカーが作成した「技術施工マニュアル」等の基準を遵守することが重要である。 |
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3 | 工事現場における安全衛生管理を十分に行うこと | |
(1)
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発注者は、工事請負人が作成する破砕計画および作業手順について、事前に安全性の評価を行い、必要な計画の変更などを指示するとともに、計画通りに施工されているかを把握する。 | |
(2)
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元請は、下請との間で安全な作業を行うための連絡調整を十分に行うとともに、発注者との連絡も十分に行う。 また、岩石の破砕などの作業は、岩石の飛来、崩壊などの危険を伴うことが少なくないので、本社、支店なども作業計画の確認を行うとともに、現場において必要な指導を行う。 |