製紙工場において叩解機への流れ具合を観察するためのアクリル管が破裂
業種 | パルプ・紙製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の一般動力機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | 破裂 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100550
発生状況
この災害は、製紙工場の原質・調整工程において叩解機(こうかいき)の原料の詰まりを点検する作業中に発生したものである。災害が発生した日、パネル室操作盤のパルパー槽の液面計の表示がゼロ近くになり、叩解機(こうかいき)への原料の送給の表示がゼロになったので、係員が現場に出向き、パルパー槽をのぞいたところまだ原料が残っていたので、パルパー槽に水を流し込んだ。しかし、原料が叩解機(こうかいき)に送給されないので、叩解機(こうかいき)への原料送給ポンプのスイッチを入れたり切ったりしてみたが、原料は流れ出なかったので、ポンプを停止し、パルパー槽内に溜まった水を抜いた。そして、叩解機(こうかいき)のラインに押水を行っていたところ、叩解機(こうかいき)の入口側のバルブから水が漏れ出し、叩解機(こうかいき)のシャフト部から湯気が出始めたので班長に報告した。
報告を受けた班長は、現場へ出向き、叩解機(こうかいき)の入口側のバルブを開いてみたところ、原料が流れ出したので、叩解機(こうかいき)の運転を再開した。その直後、叩解機(こうかいき)に原料を送給する配管途中に設けられたアクリル管が、突然、破裂し原料が噴き出し、原料の流れ具合を見ていた班長の上半身に降りかかり、熱傷を負った。
原因
この災害は、原料の送給トラブルの原因を解明する作業中に、配管途中に設けられたアクリル樹脂製の管が破裂して、高温高圧の原料が噴き出して発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 原料の固形分が一部遊離して、叩解機(こうかいき)出口側の流量コントロールバルブに付着し、バルブが詰まり、叩解機(こうかいき)内で閉鎖系を形成したこと |
2 | 叩解機(こうかいき)等を運転状態のまま、原料の詰まりの位置を解明するため、試行錯誤を繰り返していたところ、叩解機(こうかいき)内で原料が循環する閉鎖系を形成したものと考えられること |
3 | 叩解機(こうかいき)が運転状態にあったため、閉鎖系内を循環して流れていた原料の運動量が熱に変わり、その温度が上昇し、温度の上昇にともなって叩解機(こうかいき)内の圧力が上昇したこと |
4 | 叩解機(こうかいき)内の温度の上昇にともなってアクリル樹脂製の管が軟化し、上昇した圧力に耐えられずに破裂したため、高温高圧の原料が噴き出したこと |
5 | 設備およびその付属機器類の定期的な点検整備が不十分であり、バルブに付着した原料の固形分が放置されていたこと |
6 | トラブル処理についての作業が標準化されていなかったため、直ごとの班長の経験による判断に委ねられていたこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | トラブル処理に当たっては、装置の運転を停止して行うことを原則とする措置を明確にし、運転状態で処理する必要のある場合には、発生する危険性についての検討を十分に行い、予想される危険性の対処方法を定めるなどの作業手順を作成すること |
2 | 配管途中に設ける観察用に必要な配管に使用する材質は、流れる原料の異常時を含めた想定される温度上昇、内部の圧力上昇に十分耐えうるものとすること また、外部からの衝撃などに対する防護措置を施すことも必要であること |
3 | 機械設備およびその付属機器類の点検整備については、点検者を定めて、点検項目およびその頻度などを定めたチェックリストを作成して確実に実施すること |
4 | バルブ、配管類のトラブル処理または点検整備の際には、顔面を保護する保護具、身体全体を保護する作業衣を着用するなどにより、原料の噴出などの危険に対応した保護具などを使用すること |