発生状況
この災害は、有機薬品製造工場において、カプロラクタム反応槽の定期検査を行うための準備作業中、槽内で爆発したものである。
この工場では、No.1とNo.2の2基の反応槽が同系列に設置されているが、No.1の反応槽の定期検査を行うため、同反応槽の運転を休止し、内部の残留物除去などの準備をすることとなった。この反応槽は、不飽和のカプロラクタムに加圧水素により水素を添加し、飽和カプロラクタムにする反応設備で、No.2の反応槽は、通常運転を行っていた。
災害発生当日は、No.1反応槽内に残っていた触媒溶液を触媒回収槽に移送するため、朝から槽内への窒素の加圧と開放を繰り返し、5時間かけて槽内の残存水素の置換を行った。午後になって、マンホールの開放を行ったのち、触媒溶液の移送を行い、反応槽と配管との連結部に閉止板を挿入する作業を行った。その後、反応槽に取り付けられた蒸気配管をチェーンブロックで移動させようとしたとき、槽内で爆発がおき、マンホールの蓋が吹き飛ぶと同時に、火炎が吹き出し、近くで作業していた4名の作業者が火傷や打撲を受けて被災した。
原因
この災害は、カプロラクタムの水素添加工程の反応槽において、定期検査のため同系列の2基のうち、1基の反応槽の運転を休止し、内部の残留物の除去などの準備をしていたときに槽内において爆発が発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1 |
2基の反応槽の配管は互いに連結しているため、稼働中のNo.2反応槽と共通配管の閉止バルブから水素が漏れ、No.1反応槽に逆流したこと |
2 |
閉止バルブからの水素の漏洩は、反応液や触媒液の移送時にバルブに残査などがかみ込み、バルブが完全に閉止していなかったこと |
3 |
マンホールの開放と触媒液の移送の順序を間違えたために、マンホールから空気が入り、爆発混合気体が形成されたこと |
4 |
槽の壁に触媒が付着し、これが乾燥したため空気と反応して発熱し、高温となって水素が発火・爆発したこと |
対策
この災害は、カプロラクタムの水素添加工程の反応槽において、定期検査のため反応槽の運転を休止し、内部の残留物の除去などの検査準備をしていたときに、槽内において爆発が発生したものであるが、同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1 |
反応槽内の反応液や触媒溶液を配管で移送する場合には、途中のバルブ内にスラリーなど固形物が咬み込まないよう十分な水洗いを行うか、または放圧式のバルブを採用すること |
2 |
水素のような可燃性ガスをパージをする時は、パージ終了後にガス検知器等により逆流などによる可燃性ガスが存在しないことを確認すること |
3 |
金属触媒は、空気と反応して発熱し、可燃性ガスを発火させることがあるので、反応槽内などに残留させないよう、十分水洗いを行うこと |
4 |
修理・保守時の作業手順を整備し、作業手順を間違えないようにすること |