スラグ冷却場で、スラグを投下したところ水蒸気爆発
業種 | その他の鉄鋼業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 金属材料 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 区画、表示の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100548
発生状況
この災害は、高炭素フェロクロム鋼の製造所のスラグ処理場で発生した水蒸気爆発である。被災者の所属する会社は、高炭素フェロクロム鋼を製造する工場に常駐し、トラクターショベルによる原料の運搬、スラグの運搬などの作業を行っており、被災者は1か月前よりトラクターショベルでスラグを運搬する作業等に従事していた。
スラグを運搬する作業は、電気炉で製鋼された湯をメタル・スラグ分離装置でメタルとスラグに分離したもののうちスラグ畑に排出してスラグをいったん冷却したのち、屋外のスラグ冷却場にトラクターショベルで運搬するものであった。
災害発生当日、夜間勤務(0時15分〜8時15分)の被災者は、スラグ畑でいったん冷却されたスラグをトラクターショベルのバケットにすくい、屋外のスラグ冷却場へ運搬する作業を行った。
2回目の運搬でバケットを傾けながら前進させ、スラグ冷却場でスラグを投下したところ、突然爆発現象が発生しスラグの破片が飛散するとともにトラクターショベルが炎に包まれた。被災者は自力で運転室から脱出したのち、駆けつけた親会社の主任に救出され病院に移送されたが、顔面、腕などの火傷で2か月の休業となった。
原因
その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 水溜りのところにスラグを投下したこと 降雨によりできた水溜りのところへ高熱のスラグを投下したため、水蒸気爆発が発生した。 |
2 | 作業に未熟な者に作業を行わせたこと 被災者はトラクターショベル運転技能講習を修了した者であったが、スラグの運搬作業には1か月前から従事していたもので、スラグを十分に冷却して運搬するという手順を遵守していなかった。 |
3 | 作業手順が徹底されていなかったこと 定められている作業手順では、出銑されたスラグはスラグ畑で冷却したのち、屋外のスラグ冷却場に運搬することを原則とし、高熱のスラグを運搬するときには親会社の主任の指示と確認を受けることになっていたが、これを遵守しなかった。 |
対策
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | スラグ冷却場などは水溜りができない構造とすること 水蒸気爆発は、水溜り等を高温の溶融物等で包む形の場合に発生するので、スラグ冷却場などは雨水等が溜まらない構造とする。 |
2 | 作業手順を見直し、関係者に周知徹底すること 高熱の溶融物等を投下する作業について、作業中のヒヤリ・ハット事例などを参考にして作業手順を見直し、その日の作業の進行状況および作業環境に応じた安全確認をして作業するように関係作業者に徹底する。 |
3 | 指差し呼称・確認などを行わせること 指差し呼称・確認は、人間の意識レベルを高め、正確な動作を行う手法として効果があるので、作業の要所でミスが生じないようその手法の導入を図る。 |
4 | 安全衛生教育を徹底すること 新規採用時はもちろんのこと、作業内容変更時の安全衛生教育を徹底する。 |
5 | 安全衛生管理体制を整備すること 親会社と協力会社との間の安全に関する協議組織を整備し、定期あるいは随時に連絡調整を行う。また、作業場所の巡回点検等を実施する。 |