フェロマンガン粉の乾燥工程において、異常が発生したため停電中、乾燥機内で粉じん爆発
業種 | 非鉄金属製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 乾燥設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | コミュニケーションなど | |||||
発生要因(管理) | 機械装置を不安定な状態にして放置する |
No.100546
発生状況
この災害は、酸化フェロマンガンの製造工場の乾燥工程において、フェロマンガン粉が粉じん爆発を起こしたものである。酸化フェロマンガンの製造工程は、フェロマンガンを粉状として、水が入っている振動ミ ルに投入して微粉化するとともに、マンガンを酸化した後、脱水し、乾燥機で連続的に乾燥 して、酸化フェロマンガン粉とするものである。
災害発生当日、作業開始後1時間30分経過した頃、工場操作室のモニターテレビで粉砕機のホッパー付近で火花が出ているのを発見したので、危険を感じて、粉砕機、乾燥機および集塵機の電源を切り、2名の作業員が粉砕機の近くまで行ったところ、粉砕機の上部にあるホッパースケール付近の床上に堆積していたフェロマンガンの粉が燃えているのを発見した。2人は、急いで近くにあったバケツの水をかけて消火した。
10分後、作業責任者と別の作業員とがホッパースケール内や粉砕器から集塵機に繋がるダクトの異常を点検していたところ、ダクトの表面の一部が熱くなっていたので、作業員がダクト内部でフェロマンガンが燃えているものと思い、注水するために粉砕機の上方にあるダクト先端の蓋を取り外そうとしたとき、突然、乾燥機付近から爆発音とともに、爆風と火炎が噴出し、工場が火炎に包まれた。そのため、乾燥機付近にいた作業員と点検孔付近にいた作業員が全身火傷を負った。
原因
この災害は、酸化フェロマンガンの製造工場の乾燥工程において、粉じん爆発を起こしたものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 粉砕機のホッパー付近に堆積していたフェロマンガン粉が発火したこと |
2 | 堆積フェロマンガンの小火災の発生により全停電したため、乾燥中の1.5〜2.0tのフェロマンガンが高温の乾燥機内に取り残され、乾燥機内で水素を発生するとともに自己発熱したこと |
3 | 全停電したため、乾燥機の換気も止まり、内部に滞留したフェロマンガンから発生した水素を排出できなかったため、乾燥機内で水素の爆発混合気体を生成したこと |
4 | 水素が乾燥機内で爆発したため、乾燥機内部の大量のフェロマンガン粉が乾燥機からダクトの点検孔などの開放部から工場内に吹き出し、粉じん爆発を引き起こしたこと |
5 | 作業員がフェロマンガン粉と水とが反応して発熱したり、水素を発生することの危険性について留意していなかったこと |
6 | フェロマンガン粉のような金属粉の取扱中に、発火・火災などの異常が発生したときの作業方法、消火方法、避難方法などに関する作業基準がなく危険物乾燥設備作業主任者も選任していなかったこと |
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 粉砕機のホッパーの付近にフェロマンガン粉が堆積すると、空気中の水分とも反応し、発熱・発火する危険性が大きいので、作業床上などにフェロマンガン粉が堆積しないよう清掃を確実に行うこと |
2 | フェロマンガン粉が水で酸化されることにより発生する水素を安全に排出する対策を講じること |
3 | 乾燥機内で可燃性ガスが発生する乾燥機は危険物乾燥設備作業主任者を選任すること 乾燥設備作業主任者は、乾燥機内部で発生する可燃性ガスの濃度を常に測定・監視する必要がある。 |
4 | 乾燥設備の構造としては換気装置を設けるとともに、乾燥機の上部または側面には、爆発放散孔など爆発放散設備を設け、爆発したときに内部のガスなどを外部の安全な場所に放出できるようにしておくこと |
5 | 異常時に乾燥機を停止するときでも、乾燥機に付随する換気設備は、非常電源の設置などにより、常時稼働できるようにしておくこと |
6 | フェロマンガン粉のような金属粉の取扱中に、発火・火災などの異常が発生したときの作業手順、消火方法、避難方法などの作業基準を作成しておくこと |