農薬製造工程において、ノルマルヘプタンが添加された粉体をミキサーに投入する作業中、火災が発生
業種 | その他の化学工業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100544
発生状況
この災害は、農薬製造工程において、ノルマルヘプタンを含有する粉体をミキサーに投入する作業中、火災が発生したものである。ミキサーに投入していた粉体は、ステンレス製のコンテナーに入れられたノルマルヘプタンで湿潤な状態とした農薬であるイミベンコナゾールであり、この工程では、粉体投入装置にコンテナーをセットしてミキサー内に粉体を投入し、ミキサーのジャケット部にスチームを通し加熱してノルマルヘプタンを取り除くものである。
災害が発生した日、作業員二人で粉体をミキサー内へ投入する作業を始めた。粉体の投入準備が完了し、エアバイブレーターを稼働させて、粉体の投入を始めたが粉体がミキサー内に落ちていかなかったので、確認窓から中をのぞいたところ、コンテナーの排出口で粉体が詰まっていた。そこで、コンテナーを降ろして、コンテナー内の粉体をかき混ぜて詰まりを直そうと判断して、シュート部の確認窓を閉じて歩き出したところ、粉体投入装置に設けられたノルマルヘプタン蒸気の排出口あたりで「ドーン」という小さな音とともに炎が見え、コンテナーが飛び、火災となり二人の作業員が火傷を負った。
原因
この災害は、農薬製造工程において、ノルマルヘプタンを含有する粉体をミキサーに投入する作業中、投入口で急激な燃焼が発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | イミベンコナゾールを湿潤な状態にするために、揮発しやすく引火性の危険の大きいノルマルヘプタンが添加されていたこと。 なお、ノルマルヘプタンは、爆発範囲が1.1%〜6.7%と引火・爆発の危険が大きいものである。 |
2 | 粉体投入装置に設けられたノルマルヘプタンの蒸気排出口とノルマルヘプタン蒸気を吸引するブロアーダクトとの間に10cmの空間があり、ノルマルヘプタンと空気との混合気が形成されやすい状態であったこと |
3 | 着火源としては、イミベンコナゾールの粉体が粉体投入装置に設けられたノルマルヘプタン排出口のメッシュをブロアーダクトに吸引されて通過する際に静電気を帯電し、その静電気の放電によるスパークであると推定されること |
対策
この災害は、農薬製造工程においてノルマルヘプタンを含有する粉体をミキサーに投入する作業で粉体に静電気が帯電し、その放電によりノルマルヘプタンの蒸気が引火して発生したものと推定されるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | ノルマルヘプタンを吸引するブロアーダクトの先端部は、粉体投入装置のシュート部に設けられたノルマルヘプタンの蒸気の排出口に直接接続するなどにより空気中にノルマルヘプタンの蒸気が漏洩しない構造にすること。また静電気除去のための接地工事を行うこと。 |
2 | 粉体を湿潤にするために使用していたノルマルヘプタンの使用をやめるか、危険有害性のない物質に代替することの検討が必要であること |
3 | 持ち出しが便利で、通行および避難の妨げにならないこと、保管中にその効力が低下しないこと等の条件を備えた箇所に爆発または火災の性状に適応する消火設備を設けること |
4 | 引火性物質についての知識経験を有する者から作業指揮者を指名し、その者に直接作業を指揮させ、設備の随時点検、設備がある場所の温度、湿度、換気の状態等の随時点検、異常時の必要な措置などを行わせること |