硫黄製造工程の定期補修工事において、沈降槽内の硫黄を掻き落とす作業中に爆発が発生
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100541
発生状況
この災害は、不溶性硫黄製造工程の定期補修工事において、沈降槽内の硫黄を掻き落とす作業中に、爆発が発生したものである。不溶性硫黄は、購入した可溶性硫黄を原料として、加熱し、二硫化炭素を吹き込んで冷却し、沈降槽で不溶性硫黄を沈殿させ、乾燥炉で乾燥して製品となる。
災害が発生した日、沈降層天井部に2つあるマンホールの一方に防爆型の懐中電灯で作業場所を照らす者、放水を担当する者、ステンレス製の掻き棒で硫黄を掻き落とす者の3人が、他方のマンホールには防爆型の懐中電灯で作業場所を照らす者、放水を担当する者、木製の掻き棒で硫黄を掻き落とす者の3人が、沈降槽底部の排出口から詰まった硫黄をステンレス製の棒で突く作業を行う者1人が配置され、沈降槽の内壁にこびりついた硫黄の掻き落としの作業を行っていた。
しばらく作業が続けられていたが、沈降槽底部の排出口での詰まりがひどくなったので、掻き棒での掻き落としの作業を中断し、沈降槽底部の排出口から詰まった硫黄をステンレス製の棒で突いて落とす作業を行っていたとき、槽の底部に爆発が起こり、その爆風が2つのマンホールから吹き抜け、沈降槽の上部にいた6人の作業員が爆風により吹き飛ばされ負傷した。
原因
この災害は、不溶性硫黄製造工程の定期補修工事において、沈降槽の内壁にこびりついた硫黄を掻き落とす作業中に、爆発が発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 爆発が発生した沈降槽内には、硫黄の掻き落としの作業を行うに際して、前工程から硫黄ととともに送給されていた二硫化炭素を洗い流すなどにより除去していなかったため、残存していた二硫化炭素の蒸気が槽内に発生し、滞留していたものと思われること。 |
2 | 着火源としては、沈降槽底部排出口からステンレス製の棒を突いたときに撹拌翼または槽内壁に当たり発生した火花、または沈下槽上部にいた作業員の着衣に帯電した静電気がステンレス製の掻き棒を介して放電した火花のいずれかであると推定されること。 なお、掻き落とした硫黄に静電気が帯電し、その帯電した静電気が放電したことが考えられるが、この掻き落としの作業は、放水しながら行われていたので硫黄に静電気が帯電していたとは考えにくい。 |
3 | この作業に従事していた作業員が、二硫化炭素の危険・有害性についての十分な知識を有していなかったこと。 |
対策
この災害は、二硫化炭素が残存する沈降槽の内壁にこびりついた硫黄を掻き落とす作業中に、爆発が発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 二硫化炭素のような危険物が入っていたタンクに係る作業を行うときには、タンク内に残存する危険物を除去すること |
2 | 危険物がタンク内に残存していないことを確認するため、タンク内および風向き、構造物の位置等に応じ、引火性の物の蒸気等が停滞し易い場所などを含めたタンクの周辺について、作業開始時および作業再開時のほか、作業中にも必要に応じてその濃度を測定すること |
3 | 危険物が存在するおそれのある配管またはタンクに係る作業を行うときは、衝撃により火花が発生する金属製などの用具を使用しないこと |
4 | 静電気が帯電しないように槽本体を確実に接地すること、静電気帯電防止作業服および静電気帯電防止用作業靴を着用させること |
5 | 作業マニュアルを作成して、作業指揮者に作業マニュアルにより作業を直接指揮させること |