産業廃棄物の廃液を入れたドラム缶から内容物が噴出して、焼却炉の火が引火して爆発的な燃焼を生じた
業種 | 産業廃棄物処理業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 構成材料の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100540
発生状況
この災害は、産業廃棄物処理工場において、製造工場から運ばれてきた廃棄物の処理作業中に爆発的な燃焼が発生したものである。整髪料などの廃棄物は、ドラム缶で運ばれるものと石油液化ガス入りスプレー缶に入ったものとがある。ドラム缶で運ばれたものは、内容物を処理工場内のタンクに移し替え、ドラム缶を製造工場へ戻していた。また、スプレー缶は、穴開け処理場で穴を開け、内容物をドラム缶にバキュームポンプで入れ、タンクに移し替えていた。
災害発生当日、被災者2名で、スプレー缶穴開け処理場でスプレー缶の内容物が入れられたドラム缶が8本置かれていたので、このドラム缶をフォークリフトで運び、タンクに移し替える作業を始めた。最初に4本のドラム缶をタンクの脇に運び、降ろして、次の4本を最初の4本と並べて降ろそうとして、フォークリフトのフォークを着地させたとき、最初に運んだ4本のドラム缶のうち1本のドラム缶の注入口から内容物が噴出し、10m先にあった焼却炉まで飛散し、焼却炉の火が引火して爆発的に燃焼した。
原因
この災害は、スプレー缶の内容物が入れられたドラム缶を運搬する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | スプレー缶の内容物に可燃性ガスである石油液化ガスが混入されていたこと |
2 | 石油液化ガスが混入されていたスプレー缶の内容物を入れたドラム缶をフォークリフトで運ぶ途中の振動等により、混入していた石油液化ガスがガス化して、ドラム缶内の圧力が上昇したこと |
3 | ドラム缶のネジ蓋が完全に閉まっていなかったため、ドラム缶内の圧力上昇でネジ蓋が吹き飛ばされ内容物が噴出したこと |
4 | ドラム缶の内容物が噴出した先で、風下側で焼却炉が稼働中であったため、焼却炉の火が噴出してきたドラム缶の内容物に引火して爆発的な燃焼にいたったこと |
5 | スプレー缶に穴を開ける工程で、内容物を上方が解放された受け皿に入れていたため、スプレー缶内にあった液化ガスが空気中に放出されたものと思いこみ、危険性を感じていなかったこと |
対策
この災害は、廃液を入れたドラム缶の運搬作業中、ドラム缶の内圧の上昇に伴ってネジ蓋が吹き飛ばされ、内容物が噴出し、焼却炉の火が引火して爆発的に燃焼したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 揮発性の高い可燃性ガスなどを含む廃液の運搬には、廃液に含まれたガスの揮発により内圧が上昇しない開放型の容器を使用すること |
2 | 可燃性ガスを含む廃液の処理に際しては、その周辺での火気使用を禁じること 風下側に火気使用設備があるときには、風向きを確認し、火気使用設備の稼働と可燃性ガスを含む廃液の処理の作業とが同時に行われないように管理する必要がある。 廃液処理の作業場所には、可燃性ガスに対応した消火設備を備え付ける。 |
3 | 廃棄物に含まれるものの危険・有害性に関する情報について、廃棄物を排出する側から入手し、その危険・有害性に対処した作業方法を定めること |
4 | 危険・有害性の情報の入手、その情報に基づいた安全対策の樹立など管理体制を確立することが必要であること 処理作業については、作業指揮者を指名し、その者に直接作業を指揮させる。 |