屋外の排水管を敷設するため、手掘りで溝の掘削・埋め戻し作業中の熱中症
業種 | 上下水道工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 高温・低温環境 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | |||||
災害の種類 | ||||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 温湿度の不適当 | |||||
発生要因(人) | 身体機能 | |||||
発生要因(管理) | その他の不安全な行動 |
No.100539
発生状況
この災害は、建設業において、排水管を埋設するための溝を掘削する作業中、作業者が熱中症(熱射病)になったものである。この工事は、病院の排水処理装置の増設に伴う排水管の敷設工事である。
現場事務所は、工事現場から約150m離れた場所にあり、ここにはクーラーのある休憩室が設けられていた。
災害発生当日(8月11日)、この日に採用された作業者Aは、作業者Bとともに午前8時頃からスコップなどを用い手作業で、病院の建屋の直ぐ脇の地面に幅50cm、深さ50cmの溝を掘削し、排水管を埋設する作業に着手し、午前中に延長12mの埋設を済ませ、1時間の休憩をとった。
午後1時から、斜面箇所での埋設作業を開始し、手作業で同様の溝を約6m掘削し排水管を敷設した。
午後3時にAは屋外の日陰の場所で約30分の休憩を取り、その後掘削箇所の埋め戻しの作業を始めた。
作業開始から20分後の3時50分頃突然Aが倒れたので同僚が振り返ったところ、痙攣を起こし汗をかいている状態で意識を失っていた。救急車で病院に移送されたが翌日の午後7時過ぎに死亡した。
原因
熱中症(熱射病)は、強い温熱負荷により引き起こされる疾病であるが、このような温熱負荷は高い気温によるばかりでなく放射熱、湿度、風速、筋作業に伴う体内熱の発生などの要因に加え、暑さへの適応能力、水分や塩分などの補給状況、循環器などの疾患の有無など多くの要因が関与して発生することから、この災害の原因としては、次のようなことがあげられる。1 | 災害発生当日の気温は30度を超え、湿度もかなり高い状況であったこと |
2 | 作業場所が、傾斜約20度の裸地で直射日光の強い南東斜面であったこと |
3 | 保護帽のみの着用で頭部への直射日光を防ぐような対策が不十分であったこと |
4 | 飲料水の補給は十分であったが、塩分の補給が不足していたこと |
5 | 被害者Aは土木作業員の経験はあったが、この年の3月まで腰痛で入院しており体力的に問題があったこと 被害者は前日まで労働に従事していなく、屋外での高気温下の作業に十分順応できなかった。また、意識的によい働きを見せようと無理をしていたとも考えられる。 |
6 | 事業者はもとより全員が熱中症の危険や予防に関する知識が不足していたこと |
対策
この災害は、作業中に作業者が熱中症 (熱射病)になったものであるが、同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 作業歴、体調などから暑さに十分順応していないと見られる作業者については、作業の内容などについて配慮すること |
2 | 着衣は、やや緩めの通気性のよいものとするとともに、つばの広い麦わら帽のような帽子を着用させ、身体(頭頚部)への直射日光を防ぐこと |
3 | 水分の補給に加え、塩分の補給を十分に行うことの重要性を徹底すること |
4 | 長時間の連続作業を避け、1時間位を目安に涼しい場所で小休息をとらせること |
5 | いささかでも身体的不調(生あくび、倦怠感など)を感じた場合は、直ちに作業を中止することを徹底すること |
6 | 夏季は湿度が高いため、気温が30℃を超える屋外作業では熱中症(熱射病)の発症のリスクがかなり大きいことを認識し、その危険性、予防対策などについて十分な教育を行うこと 最高気温の推移などにも留意し、暑さが続いている場合、あるいは最高気温・湿度がこれまでより高くなると予想される日の作業については、危険性が高まるので特に注意する必要がある。 |