|
|
この災害は、杉植林地の下草の刈払い作業中に発生したものである。
災害発生当日、被災者は、班長および同僚の3人で詰所から植林杉の下草の刈払い作業に出発した。
携帯したのは、自宅から持ってきたペットボトル1本(凍らせた水0.5リットルのもの)と水筒(1.2リットル)であったが、現場に到着後、これは車に残して作業場所には携帯しなかった。(班長が0.5リットルの凍らせた麦茶を用意した)
刈払い作業は、それぞれの担当箇所に別れて刈払機を用いて始められ、午前10時から約20分の休憩をとったが、この時麦茶を入れて凍らせたペットボトルが班長から1本ずつ渡され、被災者は口をつけたが凍っていたため約1/3を飲み残した。
11時30分頃、班長と同僚は昼食のため休憩地点に戻ったが、被災者が戻らないので探したところ、刈払機が稼働したままの傍らで意識がもうろうとした状態で倒れている被災者を発見した。直ちに救急車を呼び病院に収容した(体温は42℃もあった)が、約10時間後に熱中症のため死亡した。
被災者の服装は長袖の綿のTシャツ、綿の作業ズボン、保護帽、軍手を着用していた。
この日は、無風、快晴で午前10時にはすでに29℃近くまで気温が上昇し、相対湿度73%の状態であった。
|
|
|
|
|
|
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 |
日光が直射していて温度が高かったこと
被災者が作業していた場所は、樹高が2〜3m程度であって、強い直射日光にさらされる南東斜面であった。
また、気温は、29度近くまで上昇していて湿度も70%を超える状況であった。 |
2 |
水分の補給が不十分であったこと
被災者は、作業現場に向うときに、自宅から凍らせた麦茶入りペットボトルと水筒を持参していたが、車の中に置いたため、班長の配布したペットボトルだけで補給することになり、作業中の水分の補給が十分に行えなかったものと考えられる。 |
3 |
熱中症についての認識がなく、また、健康管理が不十分であったこと
この会社では、事業者はもとより作業者全員が熱中症についての認識がなく、高温多湿期における健康管理についての特別の指示・教育等を実施していなかった。
また、被災者は、4ヶ月程前まで約2ヶ月体調を崩して休養していたが、その後において特別の健康管理を行っていなかった。 |
|
|
|
|
|
|
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1 |
熱中症のおそれのある作業では、水分、塩分の補給を行うこと
屋外で直射日光にさらされる作業に従事する者に対しては、作業場所に十分な量の飲料水を携行させるとともに、塩分の補給についても同様に配慮することが必要である。 |
2 |
休憩時間などについて配慮すること
熱中症(または熱射病)のおそれがある作業については、労働日数、労働時間の削減について配慮するとともに、連続した作業は避け、適宜、涼しい場所で休憩を与えることが必要である。 |
3 |
健康管理などを十分に行うこと
毎日の作業開始に先立って、作業者の体調を確認するとともに、定期的な健康診断と適切な事後措置を行うことが必要である。
また、わが国の夏季は、湿度が高く気温が30℃を超えるような屋外作業では熱中症などのおそれが高いことから、関係作業者に対して、その危険性、予防対策などについてあらかじめ十分な教育を行うことが重要である。 |
|