pH調整槽内で汚泥の除去作業中に、硫化水素中毒
業種 | 水産食料品製造業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 整備不良 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100534
発生状況
この災害は、寒天を製造する工場内に設けられた廃液処理装置のPH調整槽内の清掃作業中に発生したものである。この工場では、原材料をカ性ソーダおよび濃硫酸を用いて処理する工程で生じる廃液および工場内で排出される一般排水は、廃液処理装置の流量調整槽へ送られる。
流量調整槽へ送られた廃液および排水は、pH調整槽(コンクリート造、高さが1.8m、幅が0.65m、奥行きが1.5m)へ送られ、希硫酸またはカ性ソーダを注入して中和され、曝気(ばっき)槽に送られて処理が行われる。
災害が発生した日、pH調整槽内を空にし、工場長が槽内に入り汚泥をスコップでバケツに入れ、槽の上の作業員がそのバケツを引き上げ、空のバケツを降ろすという方法で槽内に残った汚泥の除去を行っていた。
2回目のバケツを引き上げるとき、工場長が「気持ちが悪い」といったまま意識を失ってしまったので、槽の上にいた作業員が救出しようと槽内に入ったところ意識を失った。さらに、救助に入った者が意識を失ってしまい、硫化水素中毒により工場長が死亡し、他の2名が休業した。
原因
この災害は、pH調整槽内で汚泥を除去する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | pH調整用の希硫酸を供給する配管に設けられたボール弁にゴミなどの異物が入り込んで漏れが生じたため、槽内の掃除が必要になったこと |
2 | pH調整のために希硫酸が使用されており、槽の底部の攪拌されにくい汚泥内で、嫌気性の硫酸還元菌の活動により硫化水素が発生したものと考えられること |
3 | 酸素欠乏の状況、有害物の生成状況などについて、あらかじめ確認することなしに密閉されていた槽内に入ったこと |
4 | 製造工程および廃液処理施設で硫酸が使用されていたが、この危険有害性についての知識が、経営者以下全作業員になかったこと |
5 | 危険有害物について十分な知識経験を有するものを作業指揮者として配置していなかったこと |
6 | 製造工程および廃液処理設備の取扱いに関する危険有害性についての知識を付与するための安全衛生教育が行われていなかったこと |
対策
この災害は、硫化水素が生成されているpH調整槽内で汚泥を除去する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 機械設備などの点検整備については、担当者を指名し、その者に必要な知識および技能を習得させ、その手順を定めて点検整備を行わせること |
2 | 密閉されていた槽内での作業については、作業開始前に、槽内の酸素濃度、有害ガスの状況などの確認、作業中の換気の実施、保護具の使用などについての手順を定め作業員に周知すること |
3 | 酸素欠乏症、硫化水素中毒などが発生した場合の対応についての手順を定め、二次災害が発生しないように救出するために必要な救急用保護具を備え付け、定期的に訓練を実施することが必要であること |
4 | 酸素欠乏又は硫化水素中毒のおそれのある廃液処理槽などに入って作業を行うときは、 第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者を作業主任者として選任し、その者に作業を直接指揮させること |
5 | 作業員全員に対して、製造工程で使用する原材料についての危険有害性およびその防止対策などについて、安全衛生教育を実施すること |