液体窒素を配送するワゴン車に乗り込んだ被災者が酸素欠乏で倒れる
業種 | 畜産業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の圧力容器 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 機械装置を不安定な状態にして放置する |
No.100533
発生状況
この災害は、液体窒素を配送するワゴン車の中で酸素欠乏により倒れたものである。この事業場は、約150頭の種牛を飼育し、種牛から採取した精子を容器に冷凍保存して全国に販売している。なお、一部の顧客先には冷凍精子保存容器に液体窒素を補充するサービスも行っている。
災害発生前日、被災者は、内容積1m3の液体窒素容器を装備したワゴン車に内容積0.011m3の冷凍容器を積み込んで出張販売に出かけた。
液体窒素容器は、ワゴン車の荷物室に固定されており、液体窒素を容器から送給するホ−スは使用した後、その先端を差込んでおく差込み口が荷物室の床面に設けられていて、車外に通ずる配管により、液体窒素がホースの先端から漏れても、気化した窒素ガスが室内に停滞しないようになっていた。
出張2日目の朝、宿泊先の駐車場に前夜から停車してあったワゴン車の荷物室内で当日の仕事の準備をしようとして、被災者が扉を開けて荷物室に足を踏み入れた直後、突然、意識を失って倒れた。
その後、被災者は意識を取り戻し、出発しようとして車のエンジンをかけたが、気分が良くなかったので、電話で会社に連絡を取り、会社の手配で病院に収容された。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1
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ワゴン車の荷物室の扉を開けて乗り込んだときに、酸素欠乏空気を吸入したこと。
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2
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ワゴン車の荷物室に酸素欠乏空気が滞留していたこと。 液化ガス容器の送給バルブが十分に閉まっておらず、一晩駐車している間に徐々に漏れ出した窒素ガスにより、酸欠空気となった。 送給バルブが少し開いたままの状態となったのは、液化ガス容器に窒素を充填する際に充填ホース内の氷などの水分が容器内に徐々に混入し、その水分が氷となって送給バルブに付着したことにより、バルブを閉めても、十分に閉まらなかったものと考えられる。 |
3
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ワゴン車の排気設備を使用していなかったこと。 ワゴン車の荷物室の床には送給ホ−スの先端を取り付けると、漏れた窒素ガスを車外に逃がすことのできる配管が取り付けられているが、ホースの先端と排気口の差込口の径が合わず使用されていなかった。 |
4
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酸素欠乏のおそれのある場所での作業の危険性について十分な安全衛生教育を実施していなかったこと。
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対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 液化窒素ガス容器を積載して長時間密閉されたワゴン車の荷物室に入る前には、酸素欠乏空気の有無を確認し、必要に応じて扉を十分に開放することなどにより換気すること。 |
2 | 送給ホースから窒素ガスが室内に漏れないようにすること。 この液化窒素ガス容器は、送給バルブから窒素ガスが漏れても、排気口からガスを車外に放出できる構造になっているが、送給ホースを使用後、その都度ホースの先端を排気口差込口に取付ける必要があるので、インターロックを取付けてホースが結合されていなければ、扉が閉まらないとか、車のエンジンがかからないようにすることなどについても検討する。 寒冷場所でも凍結による影響を受けないバルブの採用を検討すること。 容器内に水分が溜まることは避けがたいので、容器内の水抜きもあわせ配慮する必要がある。 |
3 | 安全衛生作業手順を定め、関係作業者に周知徹底すること。 閉鎖された場所で液体窒素を使用する場合における酸欠の危険について、安全衛生教育を徹底し、出張作業の安全衛生管理を徹底する。 |