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労働災害事例

車両積載型クレーンで水中ポンプを吊り上げようとしたとき、ジブが組立中の足場に激突

車両積載型クレーンで水中ポンプを吊り上げようとしたとき、ジブが組立中の足場に激突
業種 橋梁建設工事業
事業場規模 5~15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 足場
災害の種類(事故の型) 崩壊、倒壊
建設業のみ 工事の種類 橋梁建設工事
災害の種類 倒壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100511

発生状況

 この災害は、歩道橋架設工事において、車両積載型クレーンで水中ポンプの移動作業中に発生したものである。
 災害発生当日、この工事現場では8号橋脚への昇降用足場の組立が行われることになっていたが、朝の全体のミーティングで現場代理人からクレーンオペレータの都合がつけば、7号橋脚にいたる桟橋上にある水中ポンプ等を8号橋脚まで移動させたいとの説明があった。
 ミーティング後、作業員達はそれぞれの分担作業に従事していたが、午前8時頃になってクレーンオペレータの仕事の調整がついたので、積載型クレーンを用いて水中ポンプ等の移動作業を開始した。
 移動作業の要領は、7号橋台の水中ポンプ等を積載型クレーンの車両の荷台に積み、8号橋脚部まで移動し、橋脚部に降ろすものであった。
 午前11時頃、クレーンオペレータが、1台目の水中ポンプを8号橋脚部に降ろし、続いて2台目の水中ポンプをトラックの荷台から吊り上げるため、クレーンの方向に歩きながらクレーンのジブを縮めようとクレーン操作用のラジコンのスイッチを押したところ、クレーンジブは短縮されず、時計周りに旋回を行い、8号橋脚横に2段3スパンに組み上がっていた足場の支柱に当たったため足場が倒壊した。
 そのため、昇降用階段の組立作業を行っていた2名が足場材等の下敷きとなって1名が死亡し、1名が転落して負傷した。

原因

 この原因としては、次のようなことが考えられる。
1    クレーンの操作を誤ったこと
   クレーン(2.93t)オペレータは、クレーンのジブを短縮するため伸縮スイッチを押すべきところを誤って旋回スイッチを押してしまった。
   とくに、クレーンオペレータは、作動させるクレーンのジブの動きを見ながら操作しなければならないのに、次の荷を積んでいるトラックの方に移動することに意識が集中していたためにスイッチの押し間違いに気付くのが遅れたものである。
2    作業指示が明確でなかったこと
   工事現場の安全管理責任者がクレーンオペレータに作業指示を行ったが、作業手順について具体的な指示を行わず、また、荷降しする8号橋脚のところで足場組立などが並行して行われていることの説明をしなかった。
3    足場上の作業で倒壊・墜落防止措置を行っていなかったこと
   クレーンのジブが激突した足場は組立中であったが、倒壊防止のための措置は行われておらず、また、足場上の作業者に墜落防止のための措置も指示していなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1    クレーンオペレータに安全教育を実施すること
   クレーンオペレータは、移動式クレーン運転士の免許を有しておりクレーン運転を専任として行っていたが、歩きながらクレーンの操作をするような不安全な操作を行っており、あらためて安全教育を行うことが必要である。
2    並行作業の打合せを十分に行うこと
   他の労働者が作業を行っているところでクレーン作業を行う場合には、あらかじめ関係事業場の責任者間で十分な打合せを行い、また、現場で作業指揮を行うことが必要である。
3    統括管理を行うこと
   工事現場で複数の事業場の作業者が作業を行う場合には、元請の現場代理人(統括安全衛生責任者)が、工事計画全体およびその日の作業計画について説明と指示を行うことが重要である。
   また、個々の下請事業者に対しては、配下の作業者の安全教育の実施、現場責任者の配置などについて指導を行うことが必要である。
   なお、クレーン等については、定期自主検査の実施の有無、運転資格の有無の確認を行うことも必要である。