海水槽内で清掃作業中、硫化水素中毒
業種 | その他の水産業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100486
発生状況
この災害は、栽培漁業センター内の貯水槽内で送水管の洗浄作業中、送水管内で生成し滞留していた硫化水素を吸い込んで硫化水素中毒になったものである。この貯水槽は、コンクリート製の高さが4m、幅が7m、長さが30mのものであり、内部は海水槽、濾過水槽および淡水槽に区画され、各水槽へ出入りするために直径60cmのマンホールがそれぞれの水槽の天井部に設けられている。
この貯水槽のうち海水槽の内壁に貝類が多量に付着し、底部に貝殻が堆積していたので、槽内の清掃を行うことになり、清掃作業が行われる20日前に海水の送水ポンプの運転を停止し、送水管の止水バルブは閉められていた。
災害が発生した日、前日に引き続き、作業員3名が海水槽内に入り、槽内の壁面にこびりついた貝類を掻き落とすなどの清掃作業を昼近くに終えた。そして、送水管内の洗浄を行うことになり、送水ポンプの運転を開始し、止水バルブを開けて海水を送り始めたとき、海水槽内に突き出ている送水管の下でネットを手に持って広げて吐出物を受ける構えをしていた3名の作業員が送水管内に溜まった貝殻などとともに吐出してきた硫化水素を吸い込んで硫化水素中毒になった。
原因
この災害は、海水槽内の清掃作業中、送水管内に発生した硫化水素を吸い込んで発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 清掃作業が行われるまでの20日間送水管への送水が停止されていたため、送水管内部に滞留していた貝類が死滅し、腐敗して硫化水素が生成していたこと |
2 | 送水管からの吐出物を受けるためのネットを持って送水管の下で構えていたため、吐出してきた硫化水素を吸い込んでしまったこと |
3 | 海水が滞留していた槽内での作業を行うに際して、第二種酸素欠乏危険作業主任者が選任されていなかったこと |
4 | 硫化水素が生成されるおそれのある場所での作業についての作業手順が作成されていなかったこと |
5 | 作業員が、硫化水素が生成される危険性についての知識がなかったこと |
6 | 硫化水素が生成する危険およびその防止対策に関する知識経験を有する労働衛生スタッフがいなかったため、作業方法などについて作業員の判断に委ねていたこと |
対策
この災害は、貝類が腐敗して送水管内に生成された硫化水素が吐出したことにより発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 槽内の清掃作業のための換気を行いやすいように槽ごとにマンホールのほかに開口部を設けること。 |
2 | 閉止していた送水管へ海水を送り込むときは、送水管に滞留していた内容物がすべて吐出されたことを確認し、槽内に入るときは酸素および硫化水素の濃度を測定し、安全を確認してから換気を稼働させた状態で槽内に入り、作業中は換気を継続することなどを内容とする作業手順を作成し、作業員に周知すること |
3 | 槽内に入る前の測定結果により、必要に応じて空気呼吸器などを着用すること |
4 | 第二種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に作業を直接指揮させ、作業を開始する前および異常時に酸素および硫化水素の濃度測定、測定器具、換気装置、空気呼吸器等の設備の点検、空気呼吸器等保護具の使用状況の監視などを行わせること |