調理室内で、換気用のファンを止め、調理用のガス器具などを使用したため、一酸化炭素中毒になった
業種 | 社会福祉施設 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他防護物をなくする |
No.100457
発生状況
この災害は、保育園において、密閉状態で換気が十分に行われない調理室でガス調理器具を使用していたため、不完全燃焼で発生した一酸化炭素により中毒となったものである。調理室は、広さ約30m2、天井高さ約2.5mで、ガス食器洗浄機、これに併設されたガス 湯沸器、ガスレンジ(コンロとオーブンのセット)、ガスオーブンが設置されていた。
災害発生当日朝8時から調理員のAとBはガスレンジを用いて昼食を作った。この時は窓および出入り口を開放し、レンジフードファンと室のファンを稼動させていた。
午後0時30分からAとBは、ガス食器洗浄機とガス湯沸器を用い食事後の食器を洗浄しながらレンジのオーブンを用いてクッキーを作り始めた。
午後から外気温が高くなり、冷房が十分に効かず暑くなったため、作業開始後間もなく窓および2箇所の出入り口の扉をすべて閉め、また、ファンを全部止めた。
13時30分頃AとBは気分が悪くなり頭痛を訴えて、近くの医院で治療を受けた。
このため、保育士のCとD、さらにE、FおよびGが加わってクッキー作りを続けたが14時30分頃から5人全員が次々と頭痛などの不調を訴え治療を受けた。
原因
この災害は、換気不十分な調理室内でガス器具を使用したため、不完全燃焼により発生した一酸化炭素により中毒したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 単に冷房が効かないという理由でレンジフードファン2基と壁にある換気用ファンを止め、窓と出入口の扉を閉めて調理室を密閉状態としたこと ガス湯沸器は燃焼ガスを室外に導く排気筒がある方式であり(半密閉式)、隣接している食器洗浄器は燃焼ガスを室内に放出する方式であり(開放式)、ここには上方吸引型のレンジフードファンが設けられていた。また、開放式のガスレンジ(コンロとオーブンのセット)とガスオーブンの設置箇所には、上方吸引型のレンジフードファンが設けられていた。 |
2 | 燃焼に必要な空気が外部から補給されず酸素濃度が低下し不完全燃焼状態となり、一酸化炭素を多量に含む燃焼ガスが発生しこれが室内に滞留したこと |
3 | 密閉状態の室内でのガス器具を使用した場合の一酸化炭素中毒等についての危険性についての認識が全くなかったこと |
4 | ガス器具の使用に伴う危険性および換気の重要性についての安全衛生教育がなされていなかったこと |
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 業務用に使用する大型の給湯用ガス湯沸器については次によること (1) 屋外設置型のものとすること (2) 屋外設置型の設置が困難な場合は、外気を直接取り込み、燃焼排ガスを直接屋外に排気する密閉型で、ファンによる強制給排気式のものとし逆流の危険がある燃焼排ガスを排気筒で排気する半密閉型は原則として用いないこと |
2 | ガスレンジなどの開放型のガス器具を用いる場合は、換気を十分に行うこと レンジフードファンなどで換気する場合は、窓を開けるなど排気量に見合った空気の流入を確保する必要がある。なお、これを確実にするためは、空気が流入しないと換気ができないので、適切な箇所に十分な大きさの空気取入口を設け、これを絶対に塞がないことが大切である。 |
3 | 作業者には、機器メーカの取扱説明書などを利用して、ガス器具の使用に際しての一酸化炭素中毒の危険性、換気の重要性およびガス器具の適正な取り扱い、点検等について教育すること |
4 | ガス器具の適正使用についての注意事項を掲示し、徹底を図ること |