鶏の内臓等を貯蔵したタンク内に入った作業者が硫化水素中毒で倒れ、救助者2名も倒れた
業種 | 倉庫業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 物の置き方、作業場所の欠陥(部外の) | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100456
発生状況
この災害は、鶏肉の処理加工を行っている工場で発生した。この事業場では鶏肉の解体処理および食用にならない内臓、骨、頭部等を処理して飼料の原料となるチキンオイル、チキンミールの製造を行っている。鶏の内臓の解体処理は処理工場で、チキンオイルなどの製造はレンダリング工場で行っていた。
レンダリング工場では、原料チョッパーから送られてきた鶏肉・内臓等はストックタンクで一時貯蔵し、一定量ずつ取り出してクッカーへ送り、処理加工を行っている。
災害発生当日(月曜日)朝、前週土曜日午後6時の終業時にストックタンク内に貯蔵されていた鶏の内臓等原料(6.1t)が腐敗膨張してガスも発生し、タンク上部の鉄製蓋(縦47cm、横69cm)を持ち上げてガスと原料が溢れ出し、蓋はタンクの内部に落ちた。
原料等の溢出を知り、工場長A、現場責任者Bおよび保安係Cが現場に駆けつけ、現場責任者Bはタンク内に落ちた蓋を取り出そうと、タンク内に入ったが意識を失って倒れた。 これをみてBを救出しようとしてタンク内部に入ったCがBにロープを掛けたところで倒れ、Bを引き上げた後、C救出に入ったAも倒れた。
なお、タンクの冷却装置は稼働していなくて、日曜日の最高気温は29.5℃であった。
原因
この災害は、鶏肉の処理加工を行っている工場で発生した硫化水素中毒であるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 鶏の内臓、骨、頭部等が腐敗して硫化水素等が発生し、膨張した原料とともにタンクから溢出したこと |
2 | タンク内を換気していなっかったため、タンク内に硫化水素が充満したこと |
3 | タンク内は高濃度の硫化水素が発生していたが、タンク内部に落ちた蓋を引き上げる作業において、タンク内部の空気中の硫化水素濃度測定を行わず、また、換気も行わずにタンク内に立ち入ったこと |
4 | 被災者の救助に当たり、空気呼吸器等の呼吸用保護具を使用させなかったこと |
5 | タンク内に入る作業について、タンク内における硫化水素等による危険性やその防止対策を含めた作業手順について検討することなく作業を行ったこと |
6 | 酸素欠乏危険作業主任者を選任していなかったこと |
7 | 作業者に硫化水素中毒についての特別教育が実施されていなかったこと |
8 | 安全衛生管理体制が確立していなかったこと |
対策
この災害は、鶏肉の処理加工を行っている工場で発生したものであるが、同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | タンク等の硫化水素中毒、酸素欠乏危険場所において作業を行う場合には、タンク内部の空気中の酸素濃度および硫化水素の濃度の測定を行うとともに、タンク内部の空気中の酸素濃度を18%以上および硫化水素濃度を10ppm以下に保つよう換気を行うこと また、これらに必要な測定器具および換気装置を備えておくこと |
2 | 硫化水素中毒、酸素欠乏危険場所における救助等の緊急事態に対応できるよう空気呼吸器等の保護具を備え付けておき、緊急時にはこれを使用すること |
3 | 硫化水素中毒、酸素欠乏危険場所において作業を行う場合には、硫化水素中毒、酸素欠乏等による危険防止対策を含めた作業手順を作成し、これに基づき作業を行わせること |
4 | 第2種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、硫化水素中毒、酸素欠乏危険作業における作業指揮を行わせること |
5 | 作業者に硫化水素中毒、酸素欠乏等についての特別教育を実施すること |