製造中のボイラー復水ろ過器内で酸素欠乏症で倒れる
業種 | 一般機械器具製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 有害な場所に近づく |
No.100454
発生状況
この災害は、ボイラーの復水ろ過器の製造中に発生した。災害発生当日、午前中に製造途中の復水ろ過器について製造状態の検査・測定が実施された。その後中皿(チューブシート)の中央部をジャッキで押し下げるなどの調整作業が行われた。
午後1時、溶接士AとBが復水ろ過器下底鏡板のドレンを溶接する作業を開始した。この溶接では溶接部が酸化しないように空間部に不活性ガスのアルゴンを充填してアーク溶接の1種であるティグ溶接・マグ溶接で行うため、2重底空間部はアルゴンガスが充填されていた。午後3時50分頃予定の溶接作業を終了した。
溶接士Aは、下底鏡板のドレンノズルを溶接する作業を終え、溶接中に二重底空間部に注入していたアルゴンガスの配管ホースを取り除くため、タンクの内部に入ったが、酸素欠乏空気を吸い込み酸素欠乏症で死亡した。
溶接士Bが他の2名の作業者とともに、復水ろ過器の移動のため、足場解体を行っている時に復水ろ過器の内部中皿上で倒れている溶接士Aを発見した。
原因
この災害は、溶接中に二重底空間部に注入していたアルゴンガスの配管ホースを取り除くため、ボイラーの内部に入って酸素欠乏症で死亡したものであるが、その原因としては次のようなことが考えられる。1 | 製造途中の復水ろ過器の内部中皿上にアルゴンガスに置換した酸素欠乏の空気が溜まっていたこと |
2 | 覆水ろ過器の内部中皿上にて、アルゴンガス注入用の配管ホースを取り外す作業を行う際に、覆水ろ過器内部の空気中の酸素濃度を測定しなかったこと |
3 | 空気中の酸素濃度を18%以上に保つよう換気をしなかったこと |
4 | 空気呼吸器等を使用させなかったこと |
5 | 酸素欠乏危険作業主任者を選任しなかったこと このため酸素欠乏空気を吸入しないような作業の方法を指示していなかった。 |
6 | 酸欠危険防止のための具体的な作業手順が策定されていなかったこと |
7 | 安全衛生管理体制が不備であったこと |
対策
この災害は、溶接中に復水ろ過器の二重底空間部に注入していたアルゴンガスの配管ホースを取り除くため、タンクの内部に入って酸素欠乏空気を吸い込み酸素欠乏症となり死亡したものであるが、同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | アルゴンガスで置換したタンクの内部に入る時はタンク内部の空気中の酸素濃度を18%以上に保つよう換気すること |
2 | 作業中は換気を継続すること |
3 | 作業の性質上、換気できないときは呼吸用保護具を着用して作業すること |
4 | 作業に当たってはタンク内の酸素濃度を測定すること |
5 | 作業に当たっては、酸素欠乏危険作業主任者を選任し酸素欠乏症等防止規則に定められた職務を実行させること |
6 | 安全衛生管理体制を確立し、安全衛生管理を徹底すること 作業場所には換気装置、酸素濃度測定器具、呼吸用保護具を備えておく。 |
7 | 具体的な作業標準を策定すること |
8 | 作業者に対して酸素欠乏危険防止のための特別教育を徹底すること |