接岸した貨物船の積荷の木材チップを積出す作業の準備のため船倉に入った作業者が酸素欠乏症に被災
業種 | 港湾荷役業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 有害な場所に近づく |
No.100453
発生状況
本災害は接岸した貨物船から木材チップを積出す作業の準備のため、船倉内に立入った作業者2名が酸素欠乏症で倒れたものである。木材チップの積出し作業は、船倉内の木材チップの上に搬入したブルドーザーにより、船倉内でチップを荷役用バケットに積み込み、本船揚貨装置を用いて搬出して陸上装置のホッパーに投入するものである。
木材チップは、ホッパーから専用コンベヤーを通って木材チップの集積場に運ばれる。
ブルドーザーの搬入作業は、船尾の第6船倉から順次船首の第1船倉の順に行われる。
ブルドーザーは、埠頭から揚貨装置を使って甲板に吊上げ、甲板上を目的の船倉近くまで自走して、甲板から揚貨装置で船倉の木材チップの上に吊り降ろされる。
災害発生当日、第4船倉内に搬入したブルドーザーの玉掛けをはずすため、作業者AおよびBが甲板から3m下にある船倉内木材チップの山の上に飛び降りた。
先に船倉に入った作業者Aが木材チップの山を降りてブルドーザーに向かう途中で突然倒れた。
作業者Bは、これを見て作業者Aに近づこうとしたが、甲板上から戻るように指示され、戻ろうとしたときに倒れた。
原因
この災害は貨物船の船倉内で酸素欠乏症により作業者が倒れたものであるが、その原因としては次のようなことが考えられる。1 | ハッチボード内の空気が酸素欠乏状態になっていたこと ハッチボードにより密閉された船倉内の空気中の酸素が、航海中に木材チップに吸収され、炭酸ガスを排出し、チップの山の低い部分に滞留して酸素欠乏空気となっていた。 |
2 | 船倉内で作業を行う前に酸素濃度の測定を行わなかったこと 本船は、木材チップ専用船であり、航海中に酸素欠乏空気が船倉内の木材チップの山の低い箇所に滞留する可能性がある。 |
3 | 船倉内の換気を行わないで、作業者が船倉内に立ち入ったこと 本船には、エヤーホースにより送風する可搬式換気装置が備え付けられていたが、使用されていなかった。 |
4 | 酸素欠乏危険作業主任者が選任されていなかったこと |
5 | 元請事業場と下請事業場との混在作業における労働衛生管理体制が整備されていなくて、労働衛生管理が徹底していなかったこと |
対策
この災害は、貨物船から木材チップの荷卸の準備作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 木材チップを積載する船倉は酸素欠乏危険性の高いことを認識し、作業開始前に酸素濃度測定を実施して安全を確認すること 木材チップを船倉に積載して、航海している間に、船倉の空気中の酸素は徐々に木材チップに吸収され、空気は酸素欠乏状態となり船倉底部に滞留する。 |
2 | 船倉内作業開始前には十分換気すること チップの山の低い部分を換気しても、チップの山の中には、酸欠空気が滞留していることがあり、換気された山の低い箇所にはチップの中に滞留している酸欠空気が漏出して低い箇所に滞留することがある。 |
3 | 安全作業手順を定めること 貨物船側の換気装置を利用することのできるように安全管理計画を貨物船側と協議して定め、木材チップの船倉にフォークリフトを入れての荷役に関しては、強制換気を行うことを作業手順とする必要がある。 |
4 | 作業手順が守られるように安全衛生管理を徹底すること |