婦人用防寒コートにフッ素系撥水剤をスプレーガンを用いて塗布していた作業者が撥水剤を吸入して呼吸障害
業種 | 衣服その他の繊維製品製造業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100451
発生状況
この災害は、婦人用防寒コートにフッ素系撥水剤をスプレーガンを用いて塗布していた作業者が撥水剤を吸引して呼吸障害を起こしたものである。各種衣類の縫製業を行うX社では、自社で製造した婦人用防寒コート約400着について納入先から撥水加工を行ってほしいと依頼があったので、試作のため約20着のコートに業務用撥水スプレー18本を用いて撥水加工を行った。しかし、この方法は作業効率が良くなかったので、手持ち式電動式スプレーガンを用いて撥水剤溶液を塗布する加工方法に変更することとした。Y化成工場から撥水効果を強くしたシリコン系撥水剤を購入し、これを電動式スプレーガンに充填してコートに吹き付け塗布を行った。
災害発生当日の午前9時頃から、工場南側の荷受け用屋外プラットホームにおいて、コートを高さ140cmの位置にハンガーで吊り下げ、ガーゼマスクを着用した被害者がコートから約15〜30cm離れたところから電動式スプレーガンで吹き付け塗布を行った。1時間程作業したところで、被害者は気分が悪くなりめまいを起こした。暫く休憩したがなおらないので、病院に行き診断の結果、入院した。
原因
この災害は、婦人用防寒コートにフッ素系撥水剤をスプレーガンを用いて塗布していた作業者が撥水剤を吸引して呼吸障害を起こしたものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 電動スプレーガンで噴霧された撥水剤に含有しているフッ素系樹脂およびイソヘキサンを吸引したこと
2 作業場所は三方開放であったが、気象条件が無風に等しい状態であったこと
3 安全衛生作業手順が定められていなかったこと
4 撥水剤の人体におよぼす作用等を確認していなかったこと
5 呼吸用保護具の防毒マスクを用いず、ガーゼマスクの着用だけで撥水剤の吹付け加工を行ったこと
6 労働衛生管理体制が確立していなかったこと
7 使用する化学物質の有害性を調査する仕組みがなかったこと
8 作業前の安全衛生教育がされていなかったこと
対策
この災害は、婦人用防寒コートにフッ素系撥水剤をスプレーガンを用いて塗布していた作業者が撥水剤を吸引して呼吸障害を起こしたものであるが、同種災害防止のためには、次ぎのような対策の徹底が必要である。1 作業場所の換気通風を行うこと
撥水剤を塗布する作業中は送風機を設置し送風するなど有機溶剤のミストを作業者が吸入しないようにする必要がある。
2 防毒マスク又は空気呼吸器を着用すること
3 安全衛生作業手順を定め、作業者に周知徹底すること
4 撥水剤等の化学物質を購入するときはMSDSの提示をもとめ、有害性を確認してその対策を確立すること
5 フードを設け発散した撥水剤を吸引排出するようにすること
6 撥水剤塗布のスプレーガンを遠隔操作すること
7 衛生管理体制を充実すること
8 安全衛生教育を実施すること