サイロ内に入ろうとして酸素欠乏空気を吸入し、タラップ上から墜落
業種 | 畜産業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 有害な場所に近づく |
No.100450
発生状況
この災害は、酪農事業場において、サイロ内に投入された牧草を踏み締めるために、フード付きタラップからサイロ内に入ろうとしたときに酸素欠乏空気を吸入し、10mの高さから地面に墜落したものである。このサイロは、地上高さが20m、内径が8mの円柱状のものであり、天井部には直径50cmの投入口があり、直径30cmの通風孔が設けられている。
牧草を踏み締める作業は、サイロ内に牧草をブロワーで投入すると、牧草がサイロ内で山の形に溜まるので、サイロ内に作業員が入り、サイロ内の牧草を平らにし、牧草の機密性を高めるために行うものである。
災害が発生した日、被災者は、午前8時頃から前日にサイロ内に投入された牧草を踏み締める作業を始めた。被災者は、サイロ内に入る前に、ブロワーでサイロ内を10分程度換気した後、タラップを上り、地上高さ10mのところにある牧草取り出し口の蓋を開けたところ、サイロ内から生暖かい気体の臭いを感じ、その気体を吸入したところ苦しくなったのでタラップを降りようとしたが、意識を失い、10m下の地面に墜落した。
原因
この災害は、牧草を投入したサイロ内に入ろうとしたときに発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 前日に投入した牧草が呼吸し、酸素濃度が低下していたサイロ内の酸素欠乏空気を吸入したことにより意識を失い、タラップ上から墜落したこと
なお、事故が発生してから2週間後のサイロ内の酸素濃度は17%であった。
2 サイロ内に入る前に、サイロ内の酸素濃度を測定しなかったこと
3 酸素欠乏危険場所での作業に就く作業員に、安全帯、命綱などの保護具を着用させていなかったこと
4 サイロ内の事前の換気が不十分であったこと
5 第1種酸素欠乏危険作業主任者が選任されずに、適切な作業指揮が行われなかったこと
6 事業者および従業員ともに酸素欠乏危険作業に関する知識がなかったこと
対策
この災害は、サイロ内に投入した牧草の呼吸によりサイロ内の酸素濃度が低下したことにより発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 サイロ内に入る前に、酸素および二酸化窒素などの濃度を測定すること
2 測定結果により、サイロ内に入る前に必要な換気を行い、安全を確認してから作業を開始すること
なお、サイロ内で作業中は、換気を続けること
3 必要に応じて呼吸用保護具を着用すること
4 転落のおそれのある場所では、安全帯または命綱を使用すること
5 第1種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に作業を指揮させること
6 サイロ内での作業を行う者に対して、酸素欠乏症や二酸化窒素によるサイロ病などの発症の危険性およびその防止対策などについての教育を実施すること
7 空気呼吸器、はしご、繊維ロープなど非常の場合に作業者を避難させ、または救出するための必要な用具を備えること