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労働災害事例

不用となったボイラー蒸気の処理設備試運転中に作業者が酸素欠乏症で倒れる

不用となったボイラー蒸気の処理設備試運転中に作業者が酸素欠乏症で倒れる
業種 その他の木材・木製品製造業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 異常環境等
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) その他保護具を指定していない
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.100449

発生状況

 この災害は、住宅建材製造工場において、不用となったボイラー蒸気の処理設備試運転中、作業者が酸素欠乏症となったものである。
 この工場では、合板製造から住宅建材製造に転換し、合板のホットプレス用に使用していたボイラー5台のうち4台の使用を廃止し、1台だけを廃材の燃焼用に残したが、蒸気は不用なので外部に放出することとした。
 しかし、そのまま放出すると近隣住宅から苦情のでるおそれがあるので、以前に木粉じん沈殿用に使用していて、今は使用していないプール室(7m×16m×高さ8m)に蒸気を一旦放出して冷却し、外に排出することになり、ボイラー室からプール室へ配管工事を行った。
 災害発生当日、その試運転を行ったが、ボイラー技士Aがボイラーを起動させた後、排出音の大きいことに気づき、プール室に行き、30分程の間、排出口の音量等について点検調査を行ったが、ボイラー室に戻ったとき、急に意識が朦朧となって嘔吐した。
 Aは帰宅しようと思い、200m程離れたロッカー室に向かったが、途中でまた気分がわるくなって嘔吐し、その時、出会った上司に連れられて病院にいったところ、ボイラー清缶剤の中毒と診断されて、5日間入院した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 酸素欠乏の空気を吸入したこと
 病院の医師の診断では、ボイラーの清缶剤による中毒とされたが、清缶剤に含有されている水酸化ナトリウムおよび1-アミノピロリジンが高濃度の場合は問題であるがこの事例では両成分とも極く微量であり、これらによる中毒の可能性は低い。
 一方、被災者の体内の酸素分圧値が入院直後から3日目経過しても、正常値より低い値であったことから、プール室の排出口から排出されて酸素濃度の低い空気を吸入したことが原因と考えられる。
2 作業の安全管理を行っていなかったこと
 この工場では、設備の改善を行い、そのテストの実施に伴う危険有害性等については何も検討をしていなかったため、被災者が不用意に蒸気の排出口のすぐ近くまで接近する等の行動を行ったことが原因としてあげられる。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業開始前の打ち合わせを行うこと
 設備改善後のテスト作業等については、あらかじめテストに伴う危険や健康障害について検討し、立会人の配置、安全な作業手順等を定めたうえで、作業を行わせることが必要である。
 なお、事前の検討にあたっては、関連する作業、取り扱い物質等についての知識を有する者が参加することが必要である。
2 作業環境の測定行うこと
 長い間使用していない密閉された室、チップを収納している室等については、酸素欠乏危険や硫化水素中毒の危険が生ずることもあるので、作業開始前にその危険有害性の有無について検討するとともに、作業環境の測定を行うことが望ましい。
3 保護具等を準備し、使用すること
 酸素欠乏危険等のおそれがある場所での作業、高温の蒸気に接する作業等を行う場合には、あらかじめ送気マスクなどの保護具、保護衣等を準備し、必要に応じて使用できるようにしておくことが重要である。
4 安全衛生管理体制を整備すること