化学装置の窒素が封入されている配管内に点検に入った作業者が酸素欠乏症で倒れる
業種 | 機械器具設置工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 化学設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 機械器具設置工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 危険物が入っているものの |
No.100447
発生状況
この災害は、化学設備の定期修理中に窒素を封入した配管の中に工具・部品が残留していないか確認に入った作業者が酸素欠乏症になったものである。この化学設備の定期修理工事はX社が請負い、その下請けのY社が作業を行った。
工事はEDC(エチレンジクロライド)製造設備の開放検査と循環配管(直径50cm)に短管を取付けるもので、製造設備の内部は前日に窒素パージ(窒素封入)が行われていた。短管はあらかじめX社の工場で製作されたものを、EDC循環配管に幅32cmの切込み口を作り、そこにフランジを設けて取付けることになっていた。
被災者は循環配管の工事にあたって、先に行った開放検査において循環配管内に工具等の置き忘れやボルト等の残留物が無いかを確認のため配管内に入った。
入るに先立ち循環配管内の切込み口から150cmの箇所の空気を測定して、酸素濃度が18%以上であったので、窒素は放出されていると判断し、ハロゲンガス用防毒マスクとゴーグルを着用し循環配管内に這うようにして入った。3分ほど経過した頃、配管内で気を失い倒れた。
原因
この災害は、化学設備の定期修理中に窒素を封入した配管の中に工具・部品が残留していないか確認に入った作業者が酸素欠乏症になったものであるが、その原因としては次のようなことが考えられる。1 配管内の酸素濃度測定の手順が不適切であったこと。
2 酸素濃度が低下している配管の内部に立ち入ったこと。
3 酸欠用呼吸用保護具を使用しないで、ハロゲンガス用防毒マスクを使用したこと。
4 装置内残留物の確認作業について事前の打ち合わせが行われていなかったこと。
5 酸素欠乏危険作業としての危険性の認識が不十分であったこと。
6 発注者と作業担当した請負業者との連絡体制が不十分であったこと。
7 発注者が請負業者に対して安全衛生指導をしていなかったこと。
8 化学設備の内部に立ち入るには酸欠作業が予想されるのにその準備がなされていなかったこと。
対策
この災害は、化学設備の定期修理中に窒素の封入された配管の中に工具・部品が残留していないか確認に入った作業者が酸素欠乏症になったものであるが、同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 窒素パージした配管内部に入るときには、十分に換気し、酸素濃度測定をして安全を確認するとともに、空気呼吸器または送気マスクを着用して作業を行い、監視人を配置すること。
2 適切な作業手順を策定しこれによって作業すること。
3 マニュアル類を整備し、手抜き作業等の不安全行動をしないように指導監督すること。
4 残留物の確認にはファイバースコープ等を用いて外部から確認するようにすること。
5 工具類、取り外した部品のリストを作成し、配管の外で残留の有無を確認すること。
6 親企業は下請け業者の作業方法について審査する等の統括管理を徹底すること。
7 安全衛生管理体制を充実すること。
8 安全衛生教育を徹底すること。