ダンボール原紙製造用の抄紙(しょうし)機の運転再開作業中に硫化水素中毒
業種 | その他のパルプ・紙・紙加工品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100445
発生状況
この災害は、ダンボール原紙製造工場において、一時休止していた抄紙(しょうし)機の運転を再開する作業中、ピット内で発生した硫化水素によって作業者が中毒したものである。この工場は、リサイクルのため回収された古紙を処理した液状の古紙パルプを抄紙(しょうし)機により加圧、脱水した後、乾燥して板紙状のダンボール原紙を製造しているが、紙質を硬化させるため抄紙(しょうし)工程に移る前に硫酸が混入される。なお、抄紙(しょうし)機の後端部下方にはピットがあり、抄紙(しょうし)機により加圧、脱水された古紙パルプ(湿紙)から出てくる湿紙の切れ端等の残滓が希釈水とともに搬入され、ピット底部にある電動攪拌機によって撹拌されて、原料処理工程に還元されている。
災害発生当日、抄紙(しょうし)機の運転を再開したが、そのとき稼働するはずの高圧シャワーが噴出しないため、作業者Fがピットから約3メートル離れた場所まで行って、高圧シャワーバルブの開放と調圧作業をしていたところ、ピット内から流れ出してきた硫化水素により、意識を失いその場に倒れた。
この状況を見ていた作業者G以下4人は直ちにFを救出しようとして本人に近づいたが、Gを除く3人が次々とその場に倒れた。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 ピット内の底部に堆積していた硫酸を含む湿紙が抄紙(しょうし)機の約10日間に及ぶ作業休止期間中に腐泥化し、硫酸還元菌の作用により、硫化水素が生成してピット内に蓄積されていたこと
2 抄紙(しょうし)機のカラ運転をしたとき、これに連動してピット内底部に設置されている攪拌機が急激に回転し、内部の堆積物が撹拌され、蓄積していた硫化水素(対空気比重 1.189)が外部に流出し、地面を這うように拡散したこと
3 工場全体には全体換気装置は設けられていたが、災害発生箇所付近は配管や周辺機器等が配置されているため通風が悪く、流れ出してきた硫化水素がその場に滞留するおそれがあったにもかかわらず、効果的な換気設備を設置していなかったこと
4 硫化水素に関する安全衛生の認識が、関係作業者全員に欠如していたこと
5 事業場には、救急体制が一応確立され、救急作業を行うための空気呼吸器等の設備は整えられていたが、これらを使用させないまま救助活動に当たらせたこと
対策
この災害は、ダンボール原紙製造工場において、抄紙(しょうし)機の運転再開作業中に発生した硫化水素中毒であるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 ピット内等硫化水素が発生するおそれのある場所には湿紙の残滓が停滞しないように排除すること
2 ピット内等硫化水素が発生するおそれのある場所には換気設備を設け、換気を十分に行うこと
3 抄紙(しょうし)機の運転を再開するときは、ピット内等硫化水素が発生するおそれのある場所およびその附近の作業環境測定を実施し、安全を確認すること
4 定期修理後の運転再開作業について、リスクアセスメントを行い、安全作業手順を作成し、関係作業者に周知すること
5 異常時の救急体制を整備し、救助活動の教育訓練を実施すること
6 硫化水素および酸素欠乏の危険性について安全衛生教育を行うこと
7 安全衛生管理体制を整備し、安全衛生管理を徹底すること