電力ケーブルをアルミニウム被覆する作業中、加熱釜内部で酸欠のため転倒し高温に加熱されたケーブルに接触して熱傷
業種 | 非鉄金属製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の炉窯等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他の作業環境の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100444
発生状況
この災害は、電力用ケーブル製造工場においてアルミニウム被覆をする作業中に発生したものであるこの作業は構内下請X社が請け負っている。
作業は図のとおり、加熱釜で100度 に加熱したケーブルをアルミ・プレス機に送給して行うが、災害は加熱釜の内部で発生した。
ケーブルの加熱方法は加熱釜内部に450mのケーブルを巻き込んだドラムを横置きに2段に重ねてセットする。次いで、ケーブルの酸化防止のため、釜内を真空に近い状態に減圧し、釜内に配管したパイプに蒸気を通じて間接加熱する。加熱されたケーブルはドラムを回転させて釜外に送り出すが、上段のドラムのケーブルの送り出しが終わると、下段のドラムへの切替えを釜内に入って行う。
災害発生当日、X社の作業者Aは上段のケーブルの送り出しが終わったので、下段のケーブルへの切替え作業を行うため、始めに釜内に窒素を送給して内部を常圧に戻してハッチを開け、5分間ほど自然換気をして、釜内に入り作業を始めた。
このとき酸欠空気を吸引して「めまい」を起こして転倒し、100℃に熱せられたケーブルに接触し熱傷を負った。
原因
この災害は、電力用ケーブル製造工場においてアルミニウム被覆をする作業中に発生したものであるが、その原因としては次のことが考えられる。1 窒素送給により酸素濃度の低下していた釜内に入ったこと。
災害発生2日後再現テストをしたところ釜内の酸素濃度は5分経過で13.6%、8分経過で18.0%、15分経過で21.6%であった。
2 酸欠空気を吸入し「めまい」を起こして温度100℃のケーブルの上に倒れたこと。
3 窒素の危険性を認識しなかったので、釜内の換気を十分に行わなかったこと。
4 作業マニュアルが適切でなかったこと。
5 被災者に対する安全衛生教育が不十分であったこと。
6 酸素欠乏危険作業主任者を選任していなかったこと。
7 下請けの労働者に対して酸欠防止を含む安全衛生指導がされていなかったこと。
8 100度のケーブルの近接作業であるのに防熱服の着用等の防護措置をしていなかったこと。
対策
この災害は、電力用ケーブル製造工場においてアルミニウム被覆をする作業中に発生したものであるが、同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 釜内に入るときは十分に換気し、酸素濃度の測定を行い、安全を確認すること。
2 ケーブルの酸化防止のため釜内の換気ができないときは空気呼吸器又は送気マスクを着用すること。
3 窒素置換しているときはハッチに表示をすること。
4 ケーブルを釜からの送り出す作業およびケーブルのアルミ・プレス作業に関する安全作業マニュアルを整備すること。
5 酸素欠乏危険作業主任者を選任し、作業者には酸素欠乏の危険とその防止対策について安全衛生教育を実施すること。
6 親企業の統括安全衛生管理を充実すること。特に下請け事業場および労働者に対して安全衛生指導を行うこと。
7 加熱釜からケーブルをアルミ・プレス機に送り出す作業を釜の外から行えるようにするなど機械の安全化を図ること。