LPガス地下配管のガスもれ箇所の調査作業中、掘削孔内で作業者が酸欠症により死亡
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100443
発生状況
この災害は、家庭用LPガス地下配管のガス漏れ箇所の調査作業中、掘削孔内で作業者が酸素欠乏症により死亡したものである。住宅団地のLPガス地下配管のガス漏れ調査を請け負ったX社は掘削および埋め戻し作業をY社に下請させて調査作業を行った。
X社の作業者Aは、指揮者として同僚のBおよびCとともに地下配管のガス洩れ箇所の探査を行った。
作業方法は両端が主管と接続されている各枝管の両端の分岐管(主管と枝管の接続継手)を掘り起し、分岐管のプラグを外して主管との連結部にストッパーを入れ、主管との連絡を遮断し、この区間の枝管に空気を圧入してガス漏れ区間を特定するものである。
3日間の調査で漏洩箇所が判明したので、ストッパーを外すこととなり、災害発生当日午前11時半頃から作業に着手した。最初にBが掘削孔(約0.58m3)の中に入り、作業を行ったが巧くできなかった。AとCが順次交代したが駄目で、再びAが孔内に入った。約5分経過した頃、孔の外にいたBとCはAが中腰で下を向いたまま全く動かないことに気づき、急いで引き上げたが、既に意識はなく、搬送された病院で死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 作業中に掘削孔内に漏出したLPガスが掘削孔内に停滞し酸素欠乏になっていたこと
LPガスは空気より比重が重いので、漏出したLPガスは孔外に拡散しないで、掘削孔内部に滞留し、孔底部は高度の酸欠状態になっていた。
LPガスが多量に漏出したのは、この掘削孔内で分岐管のプラグを外してストッパーを外す作業を始めたとき、既にこの枝管の他端のストッパーを外してあったため、ここからガスが逆流したこと、また作業が予想外に手間取ったため、通常の作業よりも多くの時間がかかったことによる。
2 作業中、動力による換気の措置をしていなかったこと
3 送気マスクは準備されていたがこれを使用しなかったこと
4 作業者に酸欠状態となる危険、酸欠の影響などについての知識がなかったこと
また、人工呼吸による救急措置の重要性についての知識がなかっため、死亡事故に至ったものであること
対策
この災害は、掘削孔内でLPガスの地下配管のガス洩れ箇所調査作業中に発生した酸素欠乏症であるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 作業中は動力による換気を実施すること
LPガスは空気より倍重いので、空気中に漏出したガスは低い箇所に滞留する。掘削孔、地下室その他漏出したガスが流入し滞留するおそれのある箇所で作業を行う場合には自然換気は期待しないで、必ず動力による換気を行う必要がある。なお、ガス設備の修理、点検などの作業については、その内容によってはガスの漏出は避けがたいので、トラブルによる漏出の危険についての注意も必要である。
2 短時間、限定的な作業の場合はホースマスク、送気マスク等を使用すること
3 酸素欠乏の危険性、救急措置などについて教育訓練を実施すること
LPガスの酸素欠乏危険性、また、酸素濃度の低下の著しい場合は極めて短時間で予兆なく意識を失うので、救急措置として、速やかに人工呼吸を行うことが大切であることなどについての教育訓練が必要である。