合成樹脂原料の製造工程において配管の清掃作業中に漏洩したホスゲンを吸入して中毒
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 有害な場所に近づく |
No.100377
発生状況
この災害は、有機化学工業製品製造工場において、耐熱性樹脂の原料となるTODI(オルトートリジンジイソシアネート)の製造工程において発生したものである。災害発生当日、被災者らは、午前8時から、TODIの原料物質TODA(オルトートリジン)液を反応槽に仕込んで、塩化水素を反応させる塩酸塩化工程を行った後、さらにホスゲンを吹き込むホスゲン化工程に従事していた。
ところが、作業の途中で、反応槽に取り付けられたガス吹き込み管が反応液の固着によって閉塞してきたため、被災した2名は、配管の内部を清掃しようとして閉止板のフランジを取り外した。
このとき、計装室から遠隔操作でホスゲンが送り込まれ、フランジ部からホスゲンが漏出したため、反応槽の配管の清掃作業に着手していた2名が漏出したホスゲンを吸入して急性中毒となった。
なお、被災者は反応槽の配管の清掃作業中はホスゲンを送給しないように、あらかじめ計装室の作業者に指示していたが、連絡を受けた者が休憩したため、交替した別の作業者がホスゲン吹込み用の自動弁を開いてしまったものである。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | ||
1 | 反応槽内の配管の清掃作業について作業手順が決められていなかったこと | |
(1) | この事業場では、清掃作業はTODAの仕込みが終了(ホスゲン化工程が完了)してから行うこととしていたが、作業手順として定められていなかったため、従業員の判断でホスゲン化工程中に清掃作業を行ってしまった。 | |
(2) | 反応槽のホスゲン供給配管に設けられていた手動弁を開いたまま清掃作業を開始した。 | |
(3) | 防毒マスクを着用していなかった。 | |
2 | 計装室の作業者が「ホスゲン供給停止」の申し送り又は計器盤表示をしないまま、休憩のため担当部署を離れたこと | |
3 | 毒性の強いホスゲンの取扱作業に関して、作業者の危険感覚が鈍くなっており、十分な安全対策をしないで清掃作業を行ったこと |
対策
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 反応槽内の配管等の清掃作業に関しては、本質的な安全化を図ること | |
(1) | 操業中のプラントの清掃作業等非定常作業は、自動化するか、閉止板を取り外さないで清掃等が行えるようにする。 | |
(2) | 閉止板が「開」のときは、計装室のホスゲン等原料供給用自動弁が「閉」となるシステムとする。 | |
2 | 化学設備の配管の清掃作業等について、安全な作業手順を定めること | |
(1) | このような非定常的な作業については、リスクアセスメントを実施する。 | |
(2) | 反応槽内の配管の清掃作業等を行う場合には、関係作業者にその旨を周知するとともに、計装室の計器盤に「ホスゲン供給停止」などの表示を行う。 | |
(3) | 清掃作業を開始する前に、反応槽のホスゲン等原料供給配管に設けられている手動弁を必ず閉める。 | |
(4) | 万一に備えて防毒マスクを着用させる。 | |
3 | 関係作業者に対して、ホスゲン等の毒性物質については、取扱方法等に関する安全衛生教育を徹底すること |