廃バッテリーから鉛を精製する工程において慢性鉛中毒
業種 | 非鉄金属精練・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 欠陥のある機械、装置、工具、用具等を用いる |
No.100374
発生状況
この災害は、自動車用バッテリー廃品の電極板から鉛を精製する工場において発生した鉛中毒である。この事業場には、鉛精錬部門(キューポラを用いて電極板から粗鉛を分離する精錬工程、溶解炉にて粗鉛を製品鉛(1tインゴット)にする精製工程、 1tインゴットから 50kgインゴットを生産する再溶解工程)、樹脂部門(プラスチックケースを解体し、粉砕する工程)および廃液処理部門(希硫酸の入ったバッテリー廃液を中和し、工場外に排出する工程)がある。
作業者Aは、入社後約8年にわたって、鉛インゴット(1t又は50kg)を鋳造するための溶解炉および再溶解炉の炉前で溶解鉛を型に流し込む作業に従事していた。
作業者Bも入社後約5年間、主としてプラスチックケース解体作業に従事しながら、 インゴットの再溶解工程の仕事が多忙なときには作業者Aの応援に行っていた。
会社が行った鉛健康診断の結果、両名とも鉛中毒と診断され、Aは休業し、Bは就労しながら療養するに至った。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | ||
1 | 長期間にわたって鉛粉じんを多量に吸入していたこと 鉛健康診断では、被災者 2名とも血液中の鉛の量が労災認定基準値とされている60μg/100mlを大幅に超えることが多かった。 |
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2 | 鉛粉じんを吸入する環境であったこと 溶解鉛を流し込むインゴットケースごとに局所排気装置が設けられていなかった。 鉛精錬・精製工程個所のほか、 工場入口、バッテリー解体作業場、 更衣室、 風呂場など広範囲の場所に鉛粉じんが堆積していた。 使用していた防じんマスクのフィルター交換が不適切であったため、その性能が確保されていなかった。 |
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(1) | 粉じんが付着した作業着と通勤着を同一のロッカーに保管していた。 | |
(2) | 鉛精製工程の作業場付近で、作業中に喫煙したり、 ジュースを飲んでいた。 | |
3 | 鉛作業主任者を選任していたが、 その職務を果たしていなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 溶解炉炉前の鉛を型に流し込む作業箇所に局所排気装置を設置すること | |
2 | 鉛粉じんの拡散防止措置を講ずること | |
(1) | 鉛精錬・精製工程を壁等により隔離する | |
(2) | 鉛で汚染された堆積粉じんを除去する | |
3 | 清潔の保持等に必要な措置を講ずること | |
(1) | 鉛精錬・精製工程の作業個所および休憩室等を清掃する | |
(2) | 作業着、 防じんマスク等の専用保管設備を設置する 手洗いの励行、 作業着の汚染を除去するとともに、鉛業務を行う作業場所での喫煙、 飲食を禁止する |
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4 | 次の労働衛生教育を徹底すること 鉛作業主任者に対して再教育を実施し、 局所排気装置・除じん装置の点検、 防じんマスクの着用・フィルター取り換え指導その他清潔保持に関する職務を励行させる。 全従業員および下請け作業員に対して、 鉛の有害性と鉛中毒予防に関する教育を実施する。 |