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労働災害事例

電気銅の製造工場で一酸化炭素中毒

電気銅の製造工場で一酸化炭素中毒
業種 非鉄金属精練・圧延業
事業場規模 300〜999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 構成材料の欠陥
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.100369

発生状況

 この災害は、電気銅鋳造品製造工場において、鋳造工程の切り替え作業中、一酸化炭素中毒が発生したものである。
 この工場には、連続鋳造機が2 台あり合金炉などに至る樋(とい)の切り替えを行いながら普通銅、無酸素銅、リン脱酸銅などを製造しており、無酸素銅工程では酸素の混入を防止するため、溶解した銅を流す工程を含めて1.001気圧の一酸化炭素と窒素ガスの混合気体でシールをしている。
 災害発生当日、第1連続鋳造機では、無酸素銅工程で作業が行われていたが、第2連続鋳造機では樋を普通銅のラインからリン脱酸銅ラインへの切り替えを行うため、被災者は分岐樋の開口部(30cm×40cm)に顔を近づけてアルミナシリカ化合物製の閉止栓をバールで壊して、中から繊維状のアルミナシリカ化合物を取り出す作業を行っていたが、途中で気分が悪くなったので作業を中断し、近くにあった「はつり」用の工具に供給する圧縮空気を吸った。
 気分が回復した被災者は、再び同じ作業を続けていたが、また気分が悪くなったので同僚に助けを求め、病院に行ったところ、一酸化炭素中毒と診断された。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 分岐樋のところに無酸素銅工程に使用していた一酸化炭素が漏れたこと
 分岐樋のところでは、無酸素銅を製造している連続鋳造機に供給する一酸化炭素のパイプ等が入り組んだ状態で配置されており、アルミナシリカ化合物製の閉止栓をバールで壊した時に無酸素銅工程側の閉止栓が確実に閉まっていなかったため、分岐樋のところに一酸化炭素が流入したものと考えられる。
2 作業の開始前に環境測定を行う等の措置を講じなかったこと
 この工場では、かって同様の「ヒヤリ・ハット」事例が報告されていたのに、作業の開始前あるいは作業中に一酸化炭素の測定等を行っていなかった。
3 一酸化炭素の有害性についての教育が不十分であったこと
4 特定化学物質等作業主任者がその職務を行っていなかったこと
 特定化学物質等作業主任者は選任されていたが、当時は計器室にいたため作業主任者としての職務を行っていなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 分岐樋の所にある閉止栓の締まりを確認すること
 分岐樋の所は複雑に入り組んでおり、他の経路からのガス等の漏洩のおそれがあるので、閉止栓の締まり具合を確認することが必要である。
 なお、分岐樋の切り替え部分の構造について、根本的な検討を行うことが必要である。
2 特定化学物質等の有害性について再教育を行うこと
 今回の事例あるいは現場から報告された「ヒヤリ・ハット」事例などを活用して、特定化学物質等の有害性について再教育を行うことが必要である。
3 作業環境の測定等を行うこと
 作業の開始前あるいは作業中に随時作業環境の測定を行うよう手順を定めて徹底することが必要である。
 また、特定化学物質等作業主任者は、分岐樋の切り替え作業を行う場合には現場にいて作業の指揮を行うことが必要である。