化学プラントの配管から流出したモノクロロ酢酸液に触れて死亡
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100366
発生状況
この災害は、モノクロロ酢酸ナトリウム製造工場において、原料モノクロロ酢酸を仕込み作業中、漏出した原料液に作業者が触れて死亡したものである。災害発生当日、被災者らは、 前夜発見された配管の液漏れ箇所の改修工事が完了したので、14時頃から運転を再開し、反応釜に原料仕込みを開始した。
被災者は、原料のモノクロロ酢酸液仕込み作業を行うため、ポンプを起動した後、配管改修時に閉にしていた原料タンクと反応釜の間のバルブを元バルブから順次「開」にしていった。
14時15分頃、反応釜側の最後のバルブを開くため、2階作業床に上がったとき、「閉」にするのを忘れていた枝管のバルブのノズルからモノクロロ酢酸が流出して床上一面に溜まっているのを発見した。被災者はモノクロロ酢酸が流出している床上を歩いてバルブを閉めに行こうとしたが、足を滑らせて転倒した。右半身がモノクロロ酢酸液でびっしょり濡れたが、自力で立ち上がり、責任者に報告した後、風呂場まで行き、同僚が手伝ってもらって体を水洗した。 その後、市内の病院に運ばれて治療を受けたが、転倒事故から約6時間後に多臓器不全により死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 運転を再開する前に、改修した配管のバルブの開閉を正しい手順で行わなかったため、閉め忘れた枝管のバルブからモノクロロ酢酸が作業床に流出したこと。
2 配管改修工事から運転再開に至るまでの作業手順書が作成されておらず、バルブの開閉標示札についても使用方法が関係者に徹底されていなかったこと
3 液が大量に流出したときの処置要領が定められておらず、その除去措置が講じられていなかったこと
4 不浸透性保護衣等の保護具を着用させていなかったこと
5 ばく露したときの適切な応急措置が分からなかったこと
6 モノクロロ酢酸等取り扱い物質の有害性とハロゲンガスに有効な保護具の着用等に関する労働衛生教育が実施されていなかったこと
この工場では、以前にモノクロロ酢酸を顔面に浴びて死亡災害が発生していたのに関係者にこの原料物質が死に至るほどの有害性があることを教えていなかったこと。
対策
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | モノクロロ酢酸等の有害物が流れる配管のノズルから、 有害物が漏出したときなどには、作業床に溜まることなく排出される設備を設けること | |
2 | 配管改修工事を終えて、運転を再開するような非定常作業については、 改修した配管のバルブの開閉、バルブの開閉標示札の使用方法などの作業手順書を作成し、 関係者に徹底すること | |
3 | モノクロロ酢酸等の有害物を取扱う作業者および管理者に対して、安全衛生教育を行うこと | |
(1) | 化学物質等安全データシート(MSDS)を用いて取扱い物質の有害性を周知する | |
(2) | 有害物が流出したときの緊急時の処置、保護具の着用、被災者に対する応急措置等を教育する | |
4 | 安全衛生管理を徹底すること | |
(1) | 安全衛生管理計画を作成する | |
(2) | 取扱い原料物質の有害性等に関する安全衛生教育、異常事態発生時の処置の訓練を行う | |
(3) | 衛生管理責任者による指揮監督を行う |