調理作業中に一酸化炭素中毒
業種 | 社会福祉施設 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 錯誤など | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100353
発生状況
この災害は、福祉施設付属の食事調理室において調理作業中、調理員が一酸化炭素中毒にかかったものである。この施設は職員35名の福祉施設で、入所者は79名あり、関係者の食事として毎回100 食前後の調理を行っている。
調理作業は早出・平常、遅出を1〜3 名交替制で献立表に基づき調理をおこなっていた。
災害発生当日は5 時30分から早出番による朝食の調理、早出・ 平常番による昼食の調理作業が行われ、10時20分頃、昼食の調理が一段落したので、4 台のガス器具を止め、換気扇も止めた。10時30分頃、調理員3名で夕食の調理を開始し、10時50分頃、調理員Aが回転釜に点火したが、換気扇は動かさなかった。11時頃、調理員B は開いていた調理室北側出入り口を出て食品庫に食材を取りに行き、調理室に戻る際にその扉を閉めた。11時40分頃、調理台で作業していた調理員Bは気分不調を訴えて、3m程歩いた所で意識を失って倒れた。調理室内にいた調理員A、C らによって室外に運び出したところ、意識はもどったが救急車で病院に行き、軽度のCO中毒と診断された。軽い頭痛を発症した調理員A、Cも検査の結果軽度のCO中毒と判明した。
原因
この災害は、福祉施設付属の食事調理室において調理作業中、調理員が一酸化炭素中毒にかかったものであるが、その原因として次のようなことが考えられる。1 換気扇が停止していたため、ガスの燃焼により発生した一酸化炭素等の排出が不十分になったこと。
昼食調理が一段落し換気扇のスイッチを切ったが、夕食の調理のため、再び調理員Aが回転釜に点火したとき、冷房機等の騒音により換気扇も稼動しているものと思いこんで、換気扇のスイッチを入れなかった。
2 北側出入り口を閉めてしまったため、空気の流通が悪くなり、ガスが不完全燃焼したこと。
真夏の最中で冷房効果を高めるため、北側出入り口を残して全閉に近い状態で調理作業を行っていたが、この北側出入り口を食品庫に食材を取りに行った帰りに調理員Bが閉めてしまい密閉状態となった。
3 調理室の設計および燃料を多量に消費する作業の危険性について安全配慮が不十分であり、また、作業者の安全教育も行われていなかったこと
対策
この災害は、福祉施設付属の食事調理室において調理作業中、調理員が一酸化炭素中毒にかかったものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要と考える。1 燃料の種類と使用量に応じた調理室の換気設備の能力と設置状況、火気の使用方法等について安全アセスメントを行い、設備の安全化を図るとともに、安全な調理作業手順を定めて関係作業者に周知徹底すること
従来の炊事場の建築物は隙間風が換気の役を果たしていたが、高い機密性を備えた建築物内に設けられてきている現在の調理室では換気の方法について十分に検討する必要がある。換気扇は排気用と吸気用を併用することも効果的である。
2 換気扇はガスに点火すると自動的に電源の入る構造とすること
ガス器具を使用するときスイッチをいれる方式はヒューマンエラーによりスイッチを入れ忘れする可能性がある。自動的に連動するようにすればガスを使用するときは必ず換気が行われることとなり安全性が確保できる。