都市ガス配管工事において、誤って中圧管を穿孔したため、ガスが噴出し1名が死亡、2名が休業
業種 | 建築設備工事業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 遮蔽なし、不十分 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 有害な場所に近づく |
No.100307
発生状況
この災害は、都市ガスの配管工事において、ガス管からガスが噴出したものである。この工事は、市のガス水道部が発注した個人住宅への都市ガス枝管の新設で、作業は支管が埋設されている場所を深さ約1.5mまでドラグショベルで掘削した後、支管に穿孔し、枝管を取り付けるものである。
災害発生当日、作業者3人が午前8時30分作業を開始し、道路面の掘削を行って、ガス管を露出させ、枝管を接続するために穿孔機で孔をあけた後、穿孔機を取り外したところ、低圧管であると思っていた支管が中圧管であったためガスが勢いよく噴出した。
作業者が手や足でガスの噴出を押さえようと試みたが、ガスの噴出を止めることはできず、1人がガスの圧力を胸部に受け死亡し、残りの2人は酸欠により被災した。
なお、ガスの種類は都市ガス(12A)で、ガスの圧力は中圧で3.8 kg/cm2、低圧で0.02 kg/cm2であった。 また、このガスは、CH4(メタン)を主成分としているものであるが、噴出量が多い場合には気中の酸素濃度が低下することによって酸素欠乏症を引き起こす可能性があった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 誤った施工図を作成したこと
ガス管理者が所有しているガス配管図を見て管の埋設位置と管種等を確認した際に中圧管である本管を低圧管と誤って判断し、それに基づき施工図を作成した。
そのため作業者は間違えた施工図に基づき中圧管を低圧管と思いこみ穿孔(せんこう)した。
2 噴出ガスを手や足で止めようとしたこと
ガスが噴出した際に作業者らが掘削内部に入ってガスを手や足で止めようとした。
3 安全管理体制が不備であったこと
施工等を審査し安全を確認するなどの安全管理体制が十分でなかった。
ガス管理者も管種等について確認することなく工事を許可し、現場における指導も十分に行っていなかった。
また、工事に関する安全作業マニュアルが整備されておらず、安全衛生教育も十分に行われていなかった。
さらに、ガス噴出時の処置についてガス管理者、事業者、工事責任者らの打ち合わせが十分でなかった。
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 ガスが噴出した場合には、ガス管理者にすみやかに連絡し、ガスの供給を停止してもらうとともに、その指示のもとに避難、通行止め、火気の使用禁止等の措置を講じること。
2 ガスの中圧管と低圧管は外観のみでは区別がつかないこともあるので、作業するガス管の位置、附近に配管されているガス管の種類、圧力等を作業前に確認すること。
工事責任者はガス管理者の配管図で作業場所のガス管の配置状況を確認し、工事計画を作成することが重要である。
また、ガス管理者は工事計画が安全であることを確認する審査体制を整えるとともに、発注に際して工事計画、保安対策、事業者が作成した施工図等について十分な事前審査を行って、安全を確認することが大切である。
3 緊急時の対応について、マニュアルを作成し安全衛生教育を行うこと
ガス噴出等の緊急時の対応等について安全作業マニュアル等を作成し、安全衛生教育などを通じて関係者に周知徹底を図る。