アンモニア注入装置の定期点検作業中、漏洩したアンモニアを吸入
業種 | 機械修理業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 整備不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置、工具、用具等の選択を誤まる |
No.100285
発生状況
この災害は、アンモニア注入装置の定期点検の作業中、バルブから漏洩したアンモニアガスを吸入し、被災したものである。点検作業の手順としては、まずアンモニア注入装置Aの系統を他の系統から分離し、次いでアンモニア注入装置Aの各設備の点検補修をし、その後、配管の復旧作業を行うものであった。。(図)
なお、アンモニア注入装置Aと隣接してアンモニア注入装置Bが設置されており、アンモニア注入装置AとBは配管aで結ばれていた。配管aにはバルブA(アンモニア注入装置A側)とバルブB(アンモニア注入装置B側)が設置されており、点検作業時において、アンモニア注入装置Bは稼働中であったが、バルブBは閉じられていた
また、バルブAとバルブBの間にはフランジ部が2箇所あり、そのうちA側のフランジ部に閉止板が取り付けられていた。
災害発生当日、発電所の担当社員と2次下請の作業員および3次下請の作業員3名は、アンモニア注入装置AとBを結ぶ配管aについて、閉止板の取り付けてあったフランジAとフランジBのパッキンを交換し、配管の復旧作業を始めた。
そのとき、アンモニア臭がしたので、バルブBが緩んでアンモニアが漏れているのではないかとバルブBの閉止状態を確認することとなり、この作業に立ち会っていた発電所の担当社員がバルブ開閉用の工具であるウイルキーをバルブBにかけたところ、誤ってバルブBが開いてしまい、取付けボルトを外した2箇所のフランジ部からガス化したアンモニアが漏洩し、作業員の3名がこの漏洩したアンモニアガスを吸入して被災したものである。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 定期点検工事を開始するに当たって、アンモニア注入装置Aと配管aを経由して接続されているアンモニア注入装置Bが稼動していたことから、バルブのわずかな開きでも液化アンモニアガスが漏洩するおそれがあったこと。
2 作業開始前に、バルブの開閉状態の確認が不十分であったこと。
3 アンモニアガスの漏洩するおそれのある作業に、適切な保護具を着用しなかったこと。
4 定期点検工事における配管類の復旧などの作業について作業手順の安全性の検討が不十分であったこと。
対策
この災害は、アンモニア注入装置の定期点検の作業中、バルブから漏洩したアンモニアガスにばく露されたものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 点検工事に必要な開放部分からアンモニアタンク側のバルブを2個配置すること。
なお、アンモニア注入装置Aと予備のアンモニア注入装置Bとを接続する配管を取り外し、互いに独立した経路で排煙脱硝装置へアンモニアを供給できるように配管することが望ましいこと
2 予備の装置への配管類の整備状況の確認などの切替手順、ガス漏れ時の対処方法などについて、作業の標準化を図ること。
3 アンモニアガスが流れる配管に接続されている系統の配管類に係る作業を行うときには、そのガスに適合する適切な保護具を着用すること。
4 アンモニアガスによる健康障害およびその防止対策などについての労働衛生教育を実施すること。
5 定期点検工事の作業の安全を確保するため、作業手順の安全性の検討が安全衛生管理体制の中で十分に行われるように、職務分担、責任体制などについて見直しを行うこと。