トンネル掘削作業で発破終了後、後ガスを吸い込み一酸化炭素中毒
業種 | トンネル建設工事業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | トンネル建設工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置等を指定外の方法で使う |
No.100282
発生状況
この災害は、農業水利事業として行われた導水路トンネル建設工事において、切羽の岩盤を発破した後の後ガスを吸い込んだため一酸化炭素中毒となったものである。このトンネル建設工事は、元請A社のもとで、一次下請のB社が、トンネル工事を請け負っていた。
災害発生前日の夜19時から、ずい道等の掘削等作業主任者の作業指揮のもとに被災者を含め5名の作業員が、トンネル掘削の作業に従事していた。
20時まではずり積機などの点検、材料の段取り、火薬装薬孔のさく孔、火薬の装填、結線などにそれぞれ従事し、その後、20時に第1回目の切羽の発破、22時に発破を行い、翌日1時に2回目の発破、3時に3回目の発破、5時30分に4回目の発破をかけた。発破の後に、爆破したずりのずり出し作業をずり積機を使用して行っていた。被災者は、ずり出し中はこのずり積機の運転をしており、切羽に近い所で作業を行っていた。
6時30分頃、被災者が最後の作業を終了した後、同僚に頭痛とめまいを訴えたので、病院に運んだところ、一酸化炭素中毒と診断された。
原因
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。1 トンネル掘削作業で発破が終了した後、十分に換気しないで、ずり出し作業を行ったこと
2 換気用のエアホースの圧さく空気の吐出音が大きくて、作業開始の合図が聞こえないので、合図が聞こえる程度に、空気の吐出量を絞っていたこと。
3 当該作業の危険有害性についての教育が実施されておらず、被災者は、発破後ガスの有害性(一酸化炭素による中毒)についての認識がなかったこと。
対策
この災害は、トンネル掘削作業で発破終了後、後ガスを吸い込み一酸化炭化中毒になったものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 発破後、切羽で作業を開始する前には、十分な換気を行い、安全を確認すること。
発破後の後ガスには一酸化炭素等の有害ガスが含まれるのが一般的であるので、十分に換気をした後、一酸化炭素が切羽に残留していないことを確認して作業を開始することが必要である。
2 換気について作業手順を定め、作業者に周知すること。
換気設備の圧さく空気の吹出量、換気時間等使用条件について作業手順を定めるとともに、作業者に周知徹底し、作業の都合で勝手に変更しないように指導監督する。
3 作業者に対する発破後の後ガスと一酸化炭素中毒の防止についての安全衛生教育を徹底すること。
4 作業開始前の健康状態の確認を徹底すること。
作業者の作業開始前の健康状態を必ず確認し、入坑の許可の可否を判断する。異常が認められるときは入坑させない。