化学製品の製造用反応釜の内部を清掃作業中、釜内に逆流してきた有機溶剤の蒸気により中毒
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100278
発生状況
この災害は、フェノール樹脂製造工場において、反応器の内部を清掃する作業中に発生したものである。フェノールと樹脂を重合させる反応器は、生成した樹脂を取り出した後、器内に樹脂が付着して洗浄しても取れなくなる。清掃作業はこの付着した樹脂を器内に入って、へらではがしとるものである。
災害発生当日午後になって反応器内の清掃作業を命じられた被災者Aは、始めに、反応器内を20分間通風換気した後、副班長Bとともに酸素濃度を測定し、酸欠状態ではないことを確認した。13時10分、被災者Aが器内に入り、14時まで約50分間作業を行った。
14時に一旦器外に出て休憩した後、14時50分に、はがした樹脂を紙袋に入れるため器内に入った。30分程して、作業が半分済んだところで気分が悪くなり、作業を中断し、器外に出て副班長Bに報告し、10分間休憩した。
15時30分に再び器内に入り作業を再開したが約10分後に意識を失い倒れた。10分程して、通りかかった同僚が、発見し救出した。
原因
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。1 | フェノール樹脂を合成する2以上の反応器の排気処理系統の配管が共用されており、これらの反応器、メタノールを含む排気ガスが開放された反応器に逆流したこと |
2 | 作業前、作業中の有機溶剤濃度測定が行われていなかったこと |
3 | 作業中に換気を行わなかったこと |
4 | 単独作業についての安全衛生管理が不十分であったこと |
5 | 有機溶剤の危険性について知識が不十分であったこと |
対策
この災害は、フェノール樹脂製造工場において、反応器の内部を清掃する作業で発生した有機溶剤中毒であるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 排気系統が2以上の反応器に共用するものであるときは、同時に稼働する反応器の数が変わっても適切に機能するよう設計し、かつ、それぞれの状況に応じて適切に機能する条件を明らかにし、基準を定めること。 | |
2 | 排気処理装置について定期的に点検整備し、機能の維持を図ること。 | |
3 | 反応器等タンクの内部で作業を行うときは有機溶剤中毒防止対策を徹底すること。 | |
(1) | 有機溶剤濃度測定を実施する。 | |
(2) | 反応器内作業中は、反応器のコンデンサーから排気管に通じる管等の他の設備と連絡する配管はバルブ等により確実に遮断する。 | |
(3) | 反応器の内部での作業中は、原則として動力による換気を行う。 | |
(4) | 監視人を配置する。 | |
4 | 作業員全員に有機溶剤の危険性について教育をすること。 | |
5 | 製造工程の全般を見直し、設備、作業方法について安全再評価を行うこと。 |