オイルタンクが圧力の異常上昇により破裂し、高温のオイルが飛散
業種 | 石油製品・石炭製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の装置、設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 破裂 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100216
発生状況
この災害は、石油精製プラント内の蒸留装置の塔低油を精製する減圧蒸留装置と重油混合装置の途中に設けられた送油タービンポンプの油漏れの補修作業中、オイルタンクが破裂したものである。災害が発生した日の午後になって、送油タービンポンプの軸封部からのオイル漏れが発生したので、予備のポンプに運転を切り替えた。
そして、オイル漏れの補修を、保全を請け負う構内下請業者が行い、補修作業を終え、送油タービンポンプと運転を切り替えた予備のポンプとを併用運転しながら、徐々に送油タービンポンプの単独運転に切り替え始め、ポンプの運転が通常時の状態に近づいたので、オイルタンクへの蒸気出口側の仕切弁を全開のまま、入口側の仕切弁を微開の状態にした。さらに、入口側の仕切弁を閉めるように運転責任者が運転員に指示したが、指示を受けた運転員は、蒸気出口側のバルブを約1/4回転閉めた。
そして、約6時間経過したとき、オイルタンク内に溜まっていたドレーン水がコイル内を流れる塔底油により加熱され蒸気となり、タンク内の圧力が上昇し、タンクの溶接部が破断して、大音響とともにタンク本体および塔底油、配管バルブなどが四方に飛散した。このとき近くに多作業員が、飛散した塔底油をかぶり、熱傷を負った。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 補修作業中、オイルタンク内の重質重油が固体化しないように蒸気が送給されていたことにより、ドレーン水が溜まっていたこと。
2 タンク内に溜まっていたドレーン水が、送油タービンポンプの運転再開時に、高温の重質重油が供給された際に、溜まっていたドレーン水が蒸気となってタンクシェル側が異常に圧力上昇し、タンク溶接部が破断したものと考えられること。
3 仕切弁の開閉の指示が、「蒸気入口側の仕切弁を閉めろ」とすべきところ、単に「仕切弁を閉めろ」であったため、指示を受けた新人の運転員は全開となっていた出口側の仕切弁を閉めたこと。
4 オイルタンクに安全弁などの安全装置が取り付けられていなかったこと。
5 オイルタンクシェル側の蒸気出口に仕切弁を取り付けるなどの変更の際に、安全性の検討が行われていなかったこと。
対策
この災害は、石油精製プラント内の蒸留装置の塔低油を精製する減圧蒸留装置と重油混合装置の途中に設けられた送油タービンポンプの油漏れの補修作業中、オイルタンクが破裂したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 タンク内部が大気圧を超える場合には、安全弁またはこれに代わる安全装置を備えること。なお、シェル側については、蒸気出口側の仕切弁を取り外し、大気開放とする逃し管の取り付けを検討することが望ましい。
2 タンク内温度または圧力を監視し、異常が発生した場合に、警報を発し、直ちに油の送給を閉止できるようにするなどの構造的改善を行うことが望ましいこと。
3 バルブ類などについては、誤操作を防止するため、開閉の方向および流れの方向などの表示、色分け、形状の区分などを行うこと。
4 修理などの非定常作業を行う場合には、作業の方法および順序を決定し、あらかじめ、これを関係作業員に周知徹底すること。
5 バルブ操作など作業の指示は、具体的にわかりやすく行い、復唱させることが必要であること。