二塩化エタン製造プラントから塩素ガスが漏出して中毒
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 1000人以上 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 憶測判断 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100214
発生状況
この災害は二塩化エタン製造工場において、原料の塩素ガスが大気中に漏出し、塩素ガス中毒が発生したものである。二塩化エタン製造プラントは連続式で、操作はコンピューターで自動制御されている。原料である塩素ガスは同社電解工場で生産したもの、また、エチレンは他社から、それぞれ、パイプラインによって供給されている。
この会社では年一回の定期修理工事を約2週間かけて行い、この間にプラント制御に必要な圧力単位をCGS単位からSI単位へプログラムの変更を行った。
災害発生当日、マニュアルにしたがってプラントの運転を再開したが、20分程したとき、電解工場側の塩素ガス検知機が作動し警報がでた。同時にプラント側にも排気ガス放出塔から塩素ガスが漏出しているという通報があり調査の結果運転を中止した。
この塩素ガス漏出により、現場の調査を行った電解プラントの運転作業者と定期修理工事を続行していた下請会社の作業員6名が塩素ガスを吸引した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 プラントの操作を制御するコンピュータープログラムを変更した際のチェック体制が十分でなく、プログラムにミスがあったこと
2 プラント運転再開作業において、監督責任者が現場におらず、異常事態に対する対応が迅速に行われなかったこと
3 異常時の適格な対処方法が明確に定められていなかったこと
4 呼吸用保護具の備え付けが不十分なこと
5 作業者に対する安全衛生教育が不十分なこと
対策
この災害は、二塩化エタン製造工場において、原料の塩素ガスが大気中に漏出し、塩素ガス中毒が発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 プラントの塩素、エチレンの流量管理、運転条件の管理等プラントの操作を制御するコンピュータープログラムを変更する際のダブルチェックシステムを確立すること。
2 電解工場と二塩化エチレン工場間の情報が双方の計器室のディスプレイにより確実に把握できるように改善すること。
3 プラントを起動する場合には、作業指揮者を定め、作業現場において直接指揮させること。
4 異常時の適格な対処方法を明確に定めること。
5 排ガス放出塔の出口における塩素ガス濃度を把握し、多量に放出された場合に適切な対応ができるように設備および作業方法を改善すること。
6 緊急時に容易に使用できるように、屋内屋外にかかわらず、呼吸用保護具を整備すること。
7 下請作業者も含めて、構内で作業する者に対して、安全衛生教育を実施すること。