ガス窯のテスト中異常な温度上昇を下げるため炉の扉を開放したときに炉内で爆発し、扉で打たれる
業種 | その他の窯業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 炉、窯 | |||||
災害の種類(事故の型) | 激突され | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 忘却 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100212
発生状況
この災害は、紡績機械の部品を脱脂焼成する新しいガス窯のテスト中に発生したものである。この会社では、紡績機械用のガイドローラー等のアルミナセラミックスの製造を行っており、原料の酸化アルミニウムから幾つかの工程を経て製品を完成させているが、この災害は円筒状ペレットになったものを脱脂焼成する炉で発生した。
災害発生当日、午前6時30分頃、会社の社長が熱交換器のバーナーに点火し、その後熱交換器及びそこから熱風が供給される脱脂炉の温度は設定通り順調に上昇した。
午前8時頃からは、被災者が社長から作業を引き継いだが、約2時間経過した頃から炉内温度が急上昇を始めたので、被災者は熱交換器のガスバーナーのガスの元栓を閉めたが温度の上昇は止まらず、設定値150度も超える470度まで上昇した。
そこで、被災者と社長は、脱脂炉の扉を開けて内部の温度を下げようと考え、炉本体と扉との間を2〜3cm開けた時に炉内で爆発が発生した。
この爆発により扉が急激に開放されたため、炉の正面にいた被災者は扉に打たれて約7メートル飛ばされ死亡した。なお、社長は扉の正面から外れていたため被災しなかった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 炉の温度が異常に上昇したため、ペレット内の灯油成分の気化が著しくなり、また、扉の隙間から外気が供給されて炉内に爆発の雰囲気が形成されたこと
2 炉等の設計段階で十分な検討を行わず、また、前回までの試験結果を検討することなく脱脂焼成する半製品の量を増加したこと
3 炉内の異常な温度上昇に対する安全措置が講じられていなかったこと
4 安全管理体制が整備されていなかったこと
対策
この災害は、紡績機械の部品を脱脂焼成する新しいガス窯のテスト中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 脱脂炉の新設等に際しては、設計段階で専門家によって十分な検討を行うこと
2 脱脂炉に入れる半製品の量は、事前に行ったテスト結果等を十分に検討した上で適量を定めること
3 脱脂炉の異常温度上昇に対する安全装置を装備すること
4 テスト中でも作業マニュアルを定め、それに沿って安全な作業を行うこと
5 安全管理体制を整備し、安全教育等を十分に行うこと