産業廃棄物となった発泡ポリスチレンをフィンヒーターにより融解中、爆発
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | コミュニケーションなど | |||||
発生要因(管理) | 危険場所に近づく |
No.100211
発生状況
この災害は、発泡ポリスチレン(発泡PS)の再生処理工場において、新しく設置した密閉型の融解機が、試運転中に爆発したものである。作業は発砲PS製の食品容器トレーの裁断スクラップを融解し、容積を減少するものであるが、融解時に発生する悪臭が外部に放出されないように密閉型融解機を新しく設置し試運転をすることになった。
被害者は、それまで同種の開放型の融解機を運転していたため、融解作業には馴れていたので、密閉型の融解機の運転方法をメーカーから聞いたのち一人で作業を始めた。まず、融解機内部のフィンヒーターと送風機の電源を入れ、融解機内を循環する熱風の温度を1時間ほどかけて約220℃に上昇させた。
その後、融解機の投入口からトレーのスクラップを融解機内いっぱいに詰め、融解作業を開始した。融解した発泡PSは、融解機下部の受箱に溜まり固化するが、受箱は数分でいっぱいになった段階で受箱を空のものと取り替えることにしていた。
被害者が5回目の受箱の交換を行ったのち、新たにスクラップを融解機内が満杯になるまで投入口から入れ、扉を閉めたとき、突然融解機内部で爆発が起こり、吹き飛んだ投入口扉が被害者の頭に当たり死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 発砲PSの製造時に発泡ガスとして使用されていたブタンガス(イソブタンを含む)がスクラップ内に残留しており、これが融解時に発生し、新たにスクラップを投入したとき、融解機内で爆発範囲に入ったこと。
2 点火源の一つとして、フィンヒータの高温表面があり(表面温度:約350℃)、これが発生したブタンガスに発火したこと(ブタンの発火温度365℃)。また、融解機の静電気対策が不十分であったため、スクラップ投入時に発泡PSに静電気が帯電し、放電着火した可能性もあること。
3 融解機の上部に軽量な材料で作った爆発放散口が設置されていなかったこと。
4 発泡PSの融解時の発生ガスの危険性について安全知識がなく、また教育・訓練もなされていなかったこと。
対策
この災害は、発泡ポリスチレン(発泡PS)の融解処理工場において、新しく設置した密閉型の融解機に発泡PS製の食品用トレーの裁断スクラップを投入し、融解・減容化していたとき、融解機内部で爆発が起こり、投入口扉の前で作業していた作業員が被災したものであるが、同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。1 発泡したポリスチレン(PS)やポリエチレンような発泡プラスチックスは、廃棄物として融解させたり、燃焼させたりするときは、ブタン(イソブタンも含む)が発生することがあることに留意し、換気を十分に行い、密閉された箇所に滞留させないこと。
2 融解機のような高温雰囲気が必要な場合
は、ヒータのような熱源を外部に設置し、可燃性ガスがヒータ表面に接触させないような構造とすること。
3 融解機のように内部で可燃性ガスが発生するおそれのある場合には、装置の上部に爆発放散口(扉)を設けること。
4 産業廃棄物の処理する場合には、事前に取り扱う廃棄物の危険有害性を調べておき、安全な取扱方法を作業員に周知すること。