ガス溶断作業中、廃油ピットの引火性蒸気が溶接火花により引火爆発

業種 | 石油製品・石炭製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 欠陥のある機械、装置、工具、用具等を用いる |
No.100209
発生状況
この災害は、産業廃油等を収集し、混合して、セメント工場の補助燃料を製造する工場において、原料である廃油、油泥等を仮置きしておくピットの付近で、循環ポンプ取替えに伴うアンカーボルトの溶断作業中に発生したものである。工場内には、ピットが4つあって、ピット内の廃油を混合し、調整して製品にしている。この製品をタンクに貯油するための循環ポンプが油漏れするため、定期に行われる保全、修理を待たずに交換することになった。
災害当日、午後2時過ぎ、保全主任は循環ポンプのアンカーボルトが交換するポンプと一致しないので、4本のボルトをガス切断することとし、作業をはじめた。2本目をガス溶断し終わり、低カロリー廃油が入っているピットの方へ振り返ると、ピットの中央部に火炎が立ち上がっているのが見えた。
危険を感じて、直ちに避難したが続いて起こった爆発の熱風により顔や手に火傷した。
この火災爆発のため、工場内で作業していた作業者は全員避難したが、高カロリー廃油用ピット脇で使用済みドラム缶のプレス作業に従事していた作業員がピット内に落ちて死亡しているのが、鎮火後に発見された。
原因
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。1 ピット内及びピット周辺に、メタノール、アセトン、イソプロピルアルコールなどの引火性液体および蒸気が滞留していたこと。
災害発生当日の気温は約27℃で、ピット内の引火性液体の引火点より高く、ピット内及びその周辺において何らかの発火源があれば、引火し、爆発火災となる状態であった。
2 工場内の火気使用管理が十分に行われていなかったこと。
工場内では、原則として火気の使用が禁止されているにもかかわらず、特別な許可もなく、個人の判断でアセチレンガス切断作業を行い、点火源となった。
3 セーフティ・アセスメントを行わないで危険なピット脇にプレスを設置したこと。
燃料製造に直接関係のない機械類をピット脇に設置したことは、危険区域内へ作業者の立入が多くなり、安全上問題があったこと。
対策
この災害は、産業廃油等を原料として燃料を製造する工場において、原料を仮置きしておくピットの附近で、循環ポンプの取替えに伴うアンカーボルトのアセチレンガス切断作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 工場内に引火性物質の蒸気が漏洩拡散しないように設備を改善すること。 | |
(1) | 原料保管用ピットの蓋を密閉化する。 | |
(2) | ピット内を負圧にする。 | |
(3) | 製造設備をできる限り密閉化する。 | |
(4) | 工場内の温度を化学物質の引火点以下にする。夏季は特に留意する。 | |
2 | 危険区域を設定し、関係者以外の出入を禁止するとともに、環境測定を定期的に実施し、結果を記録すること。 | |
3 | 危険区域内の火気使用を禁止すること。やむを得ず使用する場合は許可制とし、使用基準を定めること。 | |
4 | 危険区域内の電気設備は防爆構造とすること。また、危険区域内には製造に必要な最少限の機械設備のみを設置するようにレイアウトを見直すこと。 | |
5 | 安全管理体制を確立すること。 |